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Pearl パール

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ジャンル ホラー / スリラー / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 2022
公開年月日 2023/7/7
上映時間 102分
鑑賞 アマゾンプライム

 

「もしもパールが野に放たれていたら」

アマプラ見放題配信が開始されたと同時に3度目の鑑賞。去年7月の劇場鑑賞が最初だから、約1年間で3度目。筋書き・展開・結末、へたすれば印象的なセリフまでハッキリ記憶に残る脳状態なのに、再生ボタンを押さずにはいられなかった。

やっぱりいいねえ、この作品。

カラー化されたばかりの1940年代頃の映画をオマージュした映像や音楽、編集、フォントなど。全体的なアートワークによるエモさだけでもジジイはウットリさせられてしまう。同じように70年代ホラーをイメージした「X」よりも、こちらの方が好みだ。

「X」事件の60年前だから、お馴染みのあのボロ家が新しい! 屋根は青かったんだ、離れ小屋の壁はこんな鮮やかに赤かったんだと、前日譚ならではの感動がまず味わえる。いい!

冷静に見ると物語は何ということはない。なんなら開始1時間は(ホラー的には)何も起こらない。じっくりタメて、フって、一気に「ブシャー!」とくる感じはタイ・ウェスト監督のお約束。

自分も初見時の劇場では「ガチョウやカカシはもういいから早く殺れ」(笑)と少し退屈に感じていたのを覚えている。

ただ後半からは怒涛だったね。

母親炎上からの熱湯消火。瀕死の母親を見て慌てるのかと思いきや地下室へ雑に突き落とし、映写技師の元へGO。もうここで意味不明。翌朝彼に家まで送り届けてもらい、突然キレて殺害。流れるように体の悪い父親も殺害。オーディションに不合格で義妹も殺害。

高低差ありすぎて耳キーンなるわ!

ミア・ゴス信者の補正がこの1年でインフレしまくっているのは自覚しているが、この狂いっぷりが最高。大好きな世界観に、狂女ミア・ゴスが存在する。それだけで満点。

特に好きなシーンは、終盤の独白シーンかな。

パールによる約10分間にわたる一方的な語り。最初は冷静を保ちながらゆっくり語り始めるんだが、徐々に興奮を帯びはじめ、ついには狂気が剝き出しになっていく。信者歓喜の”ミア・ゴス劇場”が存分に味わえる。
(脚本にミア・ゴスが併記されているが、もしかしたらここのセリフがミアのアドリブ(エチュード的な)だからなんじゃないかと勝手に推測している)

その間ずっとパールの顔のアップで、聞き手の義妹をほとんど映さないのがいい。映さなくたって「いまミッツィ(義妹)はめちゃめちゃ怖いんだろうなあ」と、彼女の恐怖が手に取るようにわかるのがすごい。

ラストのあの笑顔シーンも含めて、「ウェスト監督っていうのは(直接的な殺害シーンだけじゃない)いろんな恐怖シーンを研究しているんだなあ」と感心した。

さて結局、パールはすべてを諦めて、夫ハワードとともにこの地に骨をうずめることを決意する。(実際以後60年間とどまり続けたのは「X」で確認済み)

「サイコパスのくせに意外とあきらめがいいなあ」とも思ったが、もしもパールがあの時、あのオーディションに合格して家から脱出できていたらどうなっていたのか。それはあり得ないにしても、さっさと両親を始末して早めにあの家を後にしていたら?と考えると楽しい。

「恐ろしい……」と身震いしながらも、ホラーファンとしては1910年代で殺人鬼として大暴れするパールも少しだけ観てみたかった気もした。

ただそれは、次作「Maxxxine」できっとわかると思う。

「もしもパールが野に放たれていたら」……死んだパールの代わりに、きっとマキシーンがそれを見せてくれるんだろう。

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