ジャンル | ドキュメンタリー / ヒューマン |
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製作国 | 日本 |
製作年 | 2024 |
公開年月日 | 2024/12/7 |
上映時間 | 101分 |
鑑賞 | キネカ大森 |
間違っていたと言い切れるか?
大切に育ててきた娘が大学二年生の時に突然言動がおかしくなったが(のちに統合失調症と診断される)、親は「娘は正常だ」と言い張りながら、特別な受診をさせることなく20年以上も自宅に軟禁してきた。
このドキュメンタリー映画を最後まで観た上で「どうすればよかったか?」と問われれば、「そんなの早く治療すればよかったんだよ」となる。
でも、そういうことじゃないんだよ。
そんなことは藤野監督だってわかってる。
単館から始まり上映館を増やしてロングラン上映されているというこの評判作を、別の映画のついでに観てきたが、むしろ”本命”を圧倒するインパクトだった。
ドキュメンタリー映画といっても、ホームビデオを編集しただけの作品なので、映像クオリティ自体は正直TVドキュメンタリーにも劣る。だけど、それだけに自分の身内内での出来事を見ているような異様なリアリティで、人生で体験したことのない「どうすればよかったか?」に直面した感覚になった。
弟である藤野監督がそんな両親を必死に説得するも、親はまともに話に応じようとすらしない。相変わらず姉は社会から断絶させられ、症状は悪化するばかり。「なんて親だ」と腹が立った。中盤までは。
父親への最後のインタビューが印象的だったな。
「お父さん、本当にお姉ちゃんは正常だと思ってた?」
と、今まで聞けなかった問いをズバリとぶつける藤野監督に、年老いて話すのもままならない父親は「病気だったと思ってたよ」(意訳)と認めながら、
「でも(社会と隔離したことは)後悔はしていない」
とハッキリ答えた。
このドキュメンタリー作品の主題はこれなんだと思った。
周囲から眺めると明らかに「間違い」なのに、娘と30年以上向き合ってきた親たちだけは「間違っていなかった」と、ある種、胸を張る。
実の弟である藤野監督はおろか(※監督は若い頃から独立している)、1時間やそこら覗き見しただけのわれわれ観客なんかには到底思い及ばない複雑な理屈があったんだろうと考えるしかない。
娘の症状だけを考えれば「どうすればよかったか?」の答えは明らか。でも藤野監督が観客に考えてもらいたかったのはそんな単純なことではなく、こういうことなんじゃないかと思った。
「両親は絶対に間違っていたと言い切れますか?」と。
この作品を最後まで観ると、そんなことは言い切れない。
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