ジャンル | ヒューマン / スリラー / ドラマ |
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製作国 | アメリカ=イギリス=ポーランド |
製作年 | 2023 |
公開年月日 | 2024/5/24 |
上映時間 | 105分 |
鑑賞 | アマゾンプライムビデオ |
この家族は本当に異常か
よく「観る者を選ぶ作品」――なんて言われる作品にはだいたい選ばれないんだよね。おれ。
日曜日から観始めて、眠くなっては中断して、寝落ちしては巻き戻して……なんて具合で観ていたら、上映時間105分が足掛け4日かかった。見放題あるある。
いや、ダメだったわけじゃないのよ。
気が進まなければ平気で観るのをやめてしまうおれが(見放題なら特に)、中断を繰り返しながらも「最後まで観た」というのは、「観続けたい」と思うほど興味深かったということ。
「面白い映画だった」とは言い難いが、「得難い体験ができた」とはハッキリ言える。
物語なんかはほぼない。ただ戦時中アウシュビッツ収容所のすぐ隣にある豪邸での”幸せ”な家族の生活を、監視カメラのように冷たい視点で淡々と追っていく構成。
休みの日には家族全員でピクニック。父親の誕生日には子供たちからサプライズプレゼント。広い庭では奥さんが育てる花々が美しく咲き誇り、鮮やかなグリーンの芝生の上では子供たちが伸び伸びと遊ぶ。
でも、ちょっとだけ変。
壁の向こうから聞こえてくる銃声や泣き声・うめき声、煙突からもくもくと湧き上がる煙。
その「変」な理由は、観客の全員が知っている。壁一枚向こうで、どんなことが起こっているかを知りながら、上っ面の”平和な日常”を見せつけられる。そういう映画だった。
「”ナチスがいかに残虐なことをしたのか”ということを、壁の外から感じてみてくれ!」って、多分そういうことじゃないんだよ。今さら、そんなわかりきったことを描いているわけじゃない。もっとこう、本質的なことだと感じた。
この”体験”でおれが嫌になったのは、
「この家族は頭おかしい」とか
「奥さんはサイコパスだ」とか
「子供が悪趣味」とかじゃなくて、
「自分だったらどうだっただろう」
と、否応なしに直面させられたことだった。
画面の外でこそ、「こいつらキモいな」「人でなし」と言えるけれども、もしもあの時代、あの国に生まれていたら、果たしておれならどうだっただろう。万が一、主人公ヘスのような役職を任されて、大事に思う家族がいて、もとより守るべき国があったら? 鼻をほじりながら画面を観ている自分だって、同じことをしていたのでは?
ヘスは異常か? 奥さんはサイコパスか? 本当に?
言い切れない。
脳内にある大事な線をブッツン切らないと、正気なんか保てるわけがない。見たくないもの、聴きたくないものの一切を遮断して「無関心」でないと生きていけない。そんな人間の姿を描いているんだと解釈した。
「だから仕方なかった」とか、「彼らだって犠牲者だろう」なんて、そんなことを言うつもりは毛頭ない。ただ、ヘス”個人”として自分と置き換えたとき、「誰だってそうなるんだよ」と容易に想像できてしまうのが恐怖だった。ヘスじゃなく、ナチスじゃなく、人間って怖い。
どこのシーンがというより、毎秒が苦痛だった。そのたびに逃げるように寝落ちした。(それで足掛け4日かかった)
80年後の平和な日本に生きていることが、ものすごく強運だったなと思えたね。そういう意味では観てよかったといえるけど、多分二度と観ない。
#A24
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