ジャンル | ドラマ |
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製作国 | アメリカ フランス イギリス 日本 ドイツ |
製作年 | 2013 |
公開年月日 | 2013/12/14 |
上映時間 | 90分 |
製作会社 | American Zoetrope=NALA Films |
鑑賞 | U-NEXT |
上品すぎてもはや超下品
序盤、主人公グループが超セレブご用達のクラブで、「あっキルステン・ダンストよ! セクシーね」「すごい、パリス・ヒルトンもいる!」なんて大興奮していたんだが、それを見たおれは「いや、お前こそエマ・ワトソンじゃん!」……と感覚がバグった。
さて、
「まったく面白くないのに大好きな映画」の名手、ソフィア・コッポラ監督の長編5作目。ずっと観たかったこの作品が、最近加入したU-NEXTで見放題になっているのを見つけて飛びついた。
ソフィア監督には珍しく「実際に起きた事件を元にした犯罪映画」ということで、ついつい面白くなっちゃうんじゃないかと心配したが、それは杞憂だった。
うん、ちゃんと面白くなかった。
これはクレームでもイヤミでもない。面白くはなかったが、希望通りの仕上がりだった。大好き。ほんとブレないねえ、ソフィア監督。
“元になった事件”とは、その名もズバリ「ブリングリング事件」。2008年から2009年にかけてロサンゼルスで起きた大規模窃盗事件で、ハリウッドセレブの家から、宝飾品や衣類など総額で300万ドル相当の被害が出たという。その実行犯グループが本作の主人公。
ほら、ついつい面白くなっちゃいそうじゃない?
犯罪映画ということで、たとえば
「あの難攻不落のセレブ宅をどうやって攻略するか」だとか、
「そんな華麗な手口で盗むのか!」とか。
あとは留守宅に忍び込むわけだから、
「家の主が帰ってきちゃうんじゃないか」のハラハラドキドキとか、
思わぬアクシデントとか、どんでん返しとか。
スピルバーグとかソダーバーグとかなら絶対そうなるよね。
ソフィア監督はそういうのは一切ない。
超絶セレブの家なのにいとも簡単に忍び込めちゃうし(玄関のマットレスの下に鍵とか 笑)、家の主は絶対に帰ってこないし、警備員もいないし、主人公たちは忍び込み放題の盗りたい放題。それどころか、その場で酒盛り・クスリ盛りなどんちゃんパーティまでおっ始める始末。なんなのコイツら。
でもね、これなんだよ、ソフィア監督は。要するにソフィア監督は一貫して「セレブの世界」を描きたい人だと思う。
この世に生れ落ちてから現在まで「セレブじゃなかった時間が1秒もない」超絶お嬢様(=ソフィア監督)が、「庶民の皆様にも少しだけ”セレブの世界”を覗き見させて差し上げるわよ」というスタンス。
本作は実録ものの体裁をとりながら、あくまで「窃盗団の目を通して”セレブの世界”を紹介する」というのが裏構成なんじゃないかな……と感じた。結局、個人的な最大の見どころは、彼らが忍び込んだセレブの邸宅内の様子だった。
バロックだかアールヌーボーだかデコだか北欧調だかよくわからない絢爛豪華な内観に、もはや美術品のような家具や調度品、1家族が住めそうな衣裳部屋や、高価な靴が図書館みたいにびっしり並ぶ巨大なシューズルーム。
“上品すぎてもはや超下品”なこの感じがリアルなんだろうな。
主人公たちだって実は貧困層なんかじゃなくて、”準セレブ”な高所得層の子息たちだったりする。著しくモラルが欠如した振る舞いを露悪的に示すことで、「こういう半端なガキどもが一番手に負えないのよ」「ワタクシたちと違ってね。おほほほ」といった、セレブの頂点ならではの性格の悪さも透けて見えてくる。ちょっと卑屈すぎかな、おれ。
でもね、これがいいの。
こういうとことん高飛車で”上から目線”なソフィア監督の世界観(というか視界)に異様に惹かれてしまう。この世界観こそが彼女の最大の価値だと(個人的には)思うし、彼女自身もその”使命”を自覚しているんじゃないかとさえ思う。
今後もずっと、こんな「面白くない」ピカピカ映画を作り続けてほしい。どうせいいんでしょ? ヒットしなくたって。
おれは観続けるよ。
👇 気まぐれでいいので全部押して💕

