ジャンル | サスペンス・ミステリー / ドラマ |
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製作国 | 日本 |
製作年 | 2022 |
公開年月日 | 2022/5/6 |
上映時間 | 129分 |
鑑賞 | アマゾンプライム |
サイコパスの遊び
「普段おチャラけている奴が真顔になると怖い」というけれど、阿部サダヲのそれがまさにそれ。こちらを見つめてくるときの、あの黒目のデカさが感情を持たない別の動物みたい。CGだよな? 違う?
なかなか面白かった。基本的には、主人公の大学生を探偵役にしたけっこう真面目なミステリーで楽しめた。
死刑囚のサイコパスと対話をしながら1枚1枚謎をめくっていく感じがワクワクする。なんとなく「羊たちの沈黙」を思い起こすけれど、構造は似ていても、いい意味でぜんぜん違う。
謎解きとしての面白さは担保しつつも、この作品は、それよりもサイコパスの造形だったり、サイコパスと接触しているうちに「伝染してしまいそう……」な危うさまでも、器用に描き出していたと感じた。
あれ良かったね。
「この死刑囚が自分の父親かもしれない」というミスリードと、そうではないとわかったときに主人公にぶつけた死刑囚・阿部サダヲのセリフ。
「あれー? ガッカリした? 自分が殺人鬼の息子かもしれないと思ったとき、妙な自信がついたんじゃない?」
この言葉が、今まで聞いたことも考えたこともない真理を突いていて、「なるほど、わかる!」などと、つい共感してしまった。今まで触られたことのない場所に触れられた気がして、なんだか新鮮だった。
……ってあれ? 「死刑にいたる病」おれにも少し伝染っちゃったかな。
でも、多かれ少なかれ誰にでもあるよね。「特別な者になりたい」願望って。作中でも、「殺人鬼の息子かもしれない」と知った主人公が、絶望の表情とは裏腹に妙に昂ってしまう様子が描かれていた。
さすがに「殺人鬼の息子」となると誰もがこうなるとは思わないけれど、それでも似たような感覚になる人は意外と多いのでは? そう思わせてくれた岡田健史(現 水上恒司)のリアルな演技グッジョブ。
さて、事件の真相(といってもキレイさっぱり開示してくれたわけじゃないけど)も、なかなか胸糞でよかった。
結局死刑囚になっても、飼いならした元子供たちを使って、新しい「サイコパスの遊び」を続けていたって解釈でいいのかな。そして、主人公もそのオモチャの一人にすぎなかったと。
主人公が真相にたどり着いてしまい、もう「遊びの駒」に使えないと分かった途端「じゃあね」と何の未練もなく背中を向けた殺人鬼・阿部サダヲが、サイコパスらしくてよかった。(なぜなら、駒はまだ他にいるから)
見た目通り明るい映画じゃないけれど、とことん暗くて興味深い作品だった。