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テルマ

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ジャンル ホラー / ファンタジー
製作国 ノルウェー=フランス=デンマーク=スウェーデン
製作年 2017
公開年月日 2018/10/20
上映時間 116分
鑑賞 アマゾンプライムビデオ

果ては神か、悪魔か(ネタバレ考察)

本作の脚本も担当しているエスキル・フォクトが監督・脚本を務めた「イノセンツ」が大マイフェイバリットなんだけど、北欧産のサイキックものはやっぱりいいね。こういうの、好きみたい。

個人的に派手なエンタメ作品至上主義だけど、このジャンルだけは例外だと気づかされた。

北欧の寒さ(色彩と温度両方の意味で)と慎ましやかさ、風景や人の美しさ。それらが醸し出す静かなリアリティに、目からメガビームが出ちゃう超能力バトルよりもずっと中二病心をくすぐられる。

超能力って、もしも本当に実在したならば、本来は不気味以外の何物でもないはずだよね。実際は「よっしゃ能力を手に入れたぜ。正義のために戦うぞ」じゃないんだよ。まずは「えっ、あたし何かヘン。先生なにこれ、どうしよう」となる。本作の主人公テルマのように。

徐々にわかってくるんだけど、最終的に判明するテルマの能力が凄まじい。
「本気で望めばそれが本当になってしまう」
という、X-MENでもリーダーになれそうなトンデモ最強スキルだった。

ただしテルマはそれに明確には気づいていないようで、序盤はひたすら戸惑う。突然起こる副作用のような癲癇症状や幻覚に悩まされ、トリガーもよくわからない。ただただ不安な日々。深刻な病気だと思って治したいと思う。

中盤、初恋の女の子・アンニャが失踪したところからようやく、自分が何かしてしまったんじゃないかと疑い出す――。

よくない?これ。めちゃくちゃ好きなさじ加減。
ずっと画面内を漂う絶妙な不穏さにゾクゾクしっぱなしだった。

実際、敬虔なキリスト教信者であるテルマは、禁忌である「同性愛」を激しく悔やみ、本気で祈った。
「主よ、このような気持ちを捨て去らせてください」。

その瞬間、アンニャが消えた。

「そっちが消えるんかーい」とツッコんだが、そこはまあいい。実際消えた。人間がまるごと。

上手く言えないけど、こういう感じがすごくいい。現象自体は恐ろしいのに、画ヅラが地味。稲妻が走ったりとか、バリバリッと派手な効果音が鳴ったりとか、盛り上がるBGMもなし。ただヒュッと消えた。いい。

終盤は力を使いこなして、元凶たる父親を炎で燃やしたり、下半身不随となっていた母親を歩けるようにしたりと、応用が利くようになっていくスケールの広げ方もリアル。

そして、「もう何だってできる」と確信した彼女は愛しいアンニャを取り戻し、ニヤリと笑ったところで終劇。果たして万能になった彼女は、この先、神になるのか、それとも悪魔になるのか……という含みを持たせながら。

 

完璧じゃないっすか!
これがリアルな超能力。「神様はサターン」。どっちにだっていける。
最後までゾクッとさせられるねえ。怖い終わり方。

だって、テルマが望めば世界だって滅ぼせるんだよ。そんな悪魔にもなり得る危険な娘を、幼い頃どうしても殺せなかった父親は、何とか制御しようとして厳しく管理してきたんだね。最終的には、実母のように廃人にしてでも。

結果、失敗した。神(悪魔)を制御するなど無理だった。
これで、もう止められる者はいない。

家族との関係、思春期の成長、宗教観、罪と罰、神と悪魔と、全編を通していろいろメタファーも仕込んでありそうだけど、そういうのは正直苦手。考えない。

そんな自分でも、表層的な物語部分だけを観てこれだけ楽しめた。「大人な中二病(矛盾語)」な人なら、みんなグッと来たでしょ。そうでもない?

「北欧サイキック」大好き。
ヨキアムでもエスキルでもいいから、もっとちょうだい。

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