ジャンル | スリラー / ドラマ |
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製作国 | アメリカ |
製作年 | 2019 |
公開年月日 | 2019/10/4 |
上映時間 | 122分 |
鑑賞 | NETFLIX |
「悪のメカニズム」を解説する危険なチュートリアル映画
今からレイトショーで鑑賞する「フォリ・ア・ドゥ」の超直前復習。「全米で大爆死」との報は聞いているし、観た人の評判も「好評」というわけではなさそうだけど、「ハウス・オブ・グッチ」の女優・ガガ様が好きなので、予定通り初日に行く。(※記:10月11日)
本作「ジョーカー」は劇場公開以来5年ぶりの鑑賞だけど、やっぱりすごい映画だね、これ。
気弱で優しかった男が、周囲に拒絶され馬鹿にされ、社会に虐げられ、憧れの人や信じる家族にも裏切られ、とことん追い詰められて、ある瞬間にプツッとキレる。
映画100年以上の歴史の中でも意外と成し得ることができなかった、「闇落ち映画」というジャンルの正解パターンを、ズバリとド直球に描き上げた作品。
映画開始時と終了時の主人公アーサー(ホアキン・フェニックス)のキャラクターが真逆ほど違うのに、”そうなるまで”の経緯を丁寧に見せていくことで、まったく違和感を感じない。
アーサーが”善良”な人を何人殺しても、本当に善良な観客たちまでが「殺しても仕方ない」と感じさせられてしまう説得力がすごい。それくらい、前半で描かれたアーサーの毎日が悲惨だった。
闇落ち後のアーサーが、憧れのコメディアン(ロバート・デ・ニーロ)に熱く訴える。
「僕にとっては人生は喜劇。善悪なんてものは主観だよ。どっちが笑えるかどうか」(意訳)
優しさと親切さを失わず、正直に生きてきたのに、毎日は辛いことばかりだった。ところが、エリート証券マンを殺したらスカッとした。図らずも、同じように貧困にあえぐ層から「私刑人ピエロ」と呼ばれヒーロー扱いされた。
優しさと正直さを捨て、怒りの感情に身を委ねたら楽しいことばかり(=笑える世界)。つい「わかる!」となってしまう。これが怖い。
観客に「悪のメカニズム」を丁寧に解説する危険なチュートリアル映画だと思った。
99.99%の人は「誰だって闇落ちする危険はあるんだな」程度の教訓で終わるけれど、1万人に1人くらいは、アーサーに自分を重ねて同じようなことを妄想し、そのまた1万人に1人くらいは3年前の京王線布田・国領駅間の刺傷事件の犯人のように、実行に移してしまう人間もいる。
罪のない人を無差別に傷つける人間の気持ちは一切わからないが、この作品によって、「そうなってしまうプロセス」は(ぼんやりとだが)理解させられてしまった。闇落ちはしないけれど、闇落ちする意味は分かる。
次作は「闇落ち」したアーサー(ジョーカー)が、我々のよく知る”悪の親玉”に昇りつめていく”ライジング”な章かと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
衝撃のサスペンス・エンターテインメント?
ちょっとよくわからないけど、楽しみ。
今から行ってくる。ガガ様待ってろ。