遺書(ブログ)

PROSPECT プロスペクト

投稿日:

ジャンル SF / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 2018
公開年月日 2019/7/20
上映時間 97分
鑑賞 アマゾンプライムビデオ

設定は作りこまれているのに徹底的に説明しない

想像の倍(半分?)をいく、ビックリするほど超静かな超地味SF

最近気になりはじめたソフィー・サッチャーの数少ない出演作のひとつなので知ってはいたが、このたびアマプラにオススメされなければ、きっと観ることはなかった。

ありがとうアマプラ、そしてサっちゃん
思いのほか良かった。これは拾い物だった。

ただし「面白かった」とは言わない。たぶん多くの人は「つまらない」と感じると思う。

だって、とにかく地味で難読
そして、これが本作の一番の特徴――

「徹底的な説明不足」。

我ながら言い得て妙。
これね、「説明が足りない」んじゃないんだよ。いや「足りない」んだけれども、ニュアンスがちょっと違う。絶対に”わざと”説明してないの。かといって、アート作品のように「行間を感じ取れ」ってそういう話でもないんだよ。正確に言うならば

「物語として明らかに必要不可欠な説明を”敢えてしない”を徹底している」。

そうだ、これだ。「各自で想像してみてくれ」じゃなくて「別に知らなくていい」。

物語冒頭、主人公父娘が着陸船で、地球みたいな惑星に降下する場面から始まるんだが、これがどこの星なのか、彼らは誰なのか、未来なのか、過去なのか、背景は全く語られない。(せめて「スターウォーズ」のように「遠い昔 はるかかなたの銀河系で…」テロップがあったらだいぶ助かる)

1960年代のアポロ計画時代を思わせるレトロな宇宙船内。だけど船内の計器や説明書類、彼女らがノートに書いているのは見たこともない文字(?)。主人公(サっちゃん)がヘッドホン(?)で聴いているのは1970年代のフレンチポップ(風?)。

どうやら我々の時代と地続きの未来でも過去でもなさそう?

こっちがそんな考察に思いを巡らせている間に、画面ではただ「場面」が流れていく。少し緊迫感のある大気圏の突入のすえ着陸した「惑星」は地球そっくり。森には大気(?)はありそうなんだけど、なぜか主人公たちは大仰な宇宙服(?)を着こんでいる。酸素補給のためというよりは「フィルター」(?)がどうとか、「塵」(?)がどうとかを気にしているもよう。どうやら空気が汚染されている?

そして彼らは木の根っこ(?)からお目当ての「宝石」(?)を採掘するんだけど、これが土中から出てきた内臓(!?)のようなものを切開(!?)して取り出す。

「気をつけろ。慎重に切らないと爆発するぞ」(?)

無事、父が汚ねえ宝石を取り出して、「これひとつでローンが返せる」(?) なんの?

とにかくずっと「?」だらけなんだけど、決して雑という感じじゃないの。どうやらね、細かいSF的設定が無数にあるのは間違いなさそうなんだよ。設定があるのに全く説明しない。セリフも少ない。

最初30分は、ただ見知らぬ世界の見知らぬ日常(?)を見せられるだけ。その後物語が動き始めるまでは、退屈に思う人も多かったろう。

普段のおれ(=極エンタメ嗜好)ならば「ここを越えられるか」が勝負なんだけど、なぜかこの作品はすんなりいけたね。退屈ではなかった。

お目当てのサっちゃん(当時17歳なのに既にこの目ヂカラ!)が出ずっぱりだったってのは大きいけど、何よりこの世界観……っていうか美術に釘付けになった。めちゃくちゃ好みだった。

宇宙船とか、宇宙服とか、道具とか武器。見たことのないSF的ガジェットなのに大体使い方がわかる。どれにも清潔感はなく、ボロボロに使いこまれている。そのバランスは「スターウォーズ」の小道具みたいなツール感に少し似てるね。かといって「スターウォーズ」のように「かっけー」感じじゃなくて、デザインはどこかモサい。洗練されていない。古臭い。でも不思議と懐かしい

そんな絶妙な塩梅で徹底的に細部まで作りこまれていて、これらを眺めているだけで時間が経った。

一応ね、ストーリーはもちろんあって、それなりにスリルサスペンスアドベンチャーもあるんだけど、全体的に本当に地味。最後まで設定に関する説明はなく「いったいキミらはなんだったの」という感じで終わる。特に隠されたメタファーテーマ性もなかった(と思う)。

ちっとも面白くはないけど、好き」。

ジャンルは違うけど、ソフィア・コッポラ監督作の”雰囲気映画“と感覚的に通じるものがあった。

物語を楽しむ映画というよりは、世界観を鑑賞する映画。定期的に何度か観たい、いや「覗きたい」。これは「10年後にまた観る映画」リストに入れておく。

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