遺書(ブログ)

ワン・バトル・アフター・アナザー

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ジャンル アクション / スリラー / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 2025
公開年月日 2025/10/3
上映時間 162分
鑑賞 チネチッタ川崎

「俺は、頼られる父親になりたかった」

監督が天才ポール・トーマス・アンダーソン(PTA)ってことで、知的な映画IQマウント映画なんじゃないかと身構えていたけど、どうだった? 今回はまったくそんなことなかったよね?

汗臭くて泥臭くて人情味が滲み出る、むしろベタなくらいの本格エンタメ作だった。面白かった。よく聞く薄っぺらい言葉を使わせてもらえば「3時間があっという間だった」。これホント。

初っ端の緊迫した戦闘シーンでガッツリ気持ちを掴まれ、以降もその引力は緩むことなく、最後には、それこそ催涙ガスを食らったかのごとくボロ泣きしてたもんね。

予告編を見ていた時点では、革命戦争映画だと思ってた。「面白そうだけど、政治的テーマとかも絡んで小難しいのかな(PTAだし)」とか。でも、蓋を開けてみれば何のことはない、

「誘拐された娘を助けるために奔走する父親の話」だった。
本当にそれ以上でもそれ以下でもない。

こんなのさ、リーアム・ニーソンシュワちゃんメル・ギブソン主演で、それこそ何十回も見たでしょう。見たよね?

おれも年頃の娘の父親だからさ、この展開にはそもそも弱い。もれなくグッと力が入る。ただしグッとはきても、ここまでボロ泣きすることはなかった。本作は何が違うのか? ぜんぜん違う。

主人公ボブ(レオナルド・ディカプリオ)は、リーアムやシュワちゃんみたいに強くない。元「革命家グループ」の一員ではあるものの、決して前線には出ない爆弾係だ。グループ崩壊後は一人娘とともに運よく逃げ伸びて、見知らぬ土地で16年間も怯えて暮らしている。娘の前では厳しい父親であろうとするが、それを見透かされてむしろ軽蔑されている。小太りで頭髪も下がり気味な、ただのオッサンだ(ただし顔はレオ様なんだけど)。

そんな”ただのオッサン”が、突然娘を誘拐されて、慌てふためいて、目をひん剥きながら探して、追いかけられて、逃げて、転んで、落っこちて、ボロボロになって、テーザー銃で感電させられて(笑)、捕まって、ギリギリ逃げて、それでも死に物狂いで追いかける。

その様子はけっこうコミカルに描かれていて、劇場内は笑いに包まれていたけど、おれは笑いながら泣いてた。「がんばれ!」「負けるな!」と心の中で応援してた。

主人公ボブは、リーアムと違ってちっとも華麗じゃない。判断も悪い。記憶力も悪い。格闘も弱い。敵に追いかけられるとバタバタ逃げてみっともない。他人に頼るばかりで結局自分一人では何もできない。

でもカッコよかった。娘のため決死の覚悟で困難に立ち向かう姿は、(何一つできていない自分にとって)紛れもなくヒーローだった。その姿に自分の願望を乗っけて、あたかも自分が戦っているような気持ちになれた。

そんな感情移入っぷりだから、ラストに娘と無事に再会できた瞬間はたまらなかったよね。ようやく娘に追いついて、一人で気を張って戦い続けてきた娘がハッと我に返って”父親”に抱きつくシーン。あのシーンでは、オッサン暗闇で肩を震わせながらボロ泣きしてたよ。

振り返ると「結局ボブ(ディカプリオ)は何一つできなかった」ってのも含めてグッと来るよね。結局、親は心配するだけ(追いついただけ)なの。すべて革命家(母)の血を引く強い娘が、知恵と度胸で切り抜けた。

再会した後、これまで向き合ってこなかった娘へ正直に語ったあのセリフが良かった。

「俺は、頼られる父親になりたかった。でも俺は逃げ続けてきた──制度から、過去から、そしてお前からも」(うろ覚え)

わかるよボブ、いやPTA。

誰だって「頼られる父親」になりたいんだよ。でも、そう思えば思うほど、大体がうまくいかない。威厳を保とうとしたり、ちっぽけなプライドが邪魔したり。見透かされて軽蔑されて。個人個人でいろいろ事情や理由は違うだろうけど、一括すれば「ただ逃げているだけ」。

最後まで逃げずに立ち向かい、しっかり娘にそれを伝えられたボブは偉いよ。カッコ悪かったけどカッコよかった。

他にもセンセイ(ベニチオ・デル・トロ。おもしろい)とか、娘のウィラ(チェイス・インフィニティ。かわいい)とか、悪役のロックジョー(ショーン・ペン。きもい)とか、母ベルフィディア(テヤナ・テイラー。カッコいい)とか、語りたい傑作キャラはいっぱいなんだけど、レオだけで文字数使い過ぎちゃったから、今回はこの辺りで終わらせとくか。

面白かった。興奮した。泣けた。
駐車場サービス3時間を超えて、追加で300円払うだけの価値は大いにあった。

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