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胸騒ぎ

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ジャンル ホラー / サスペンス・ミステリー / スリラー
製作国 デンマーク=オランダ
製作年 2022
公開年月日 2024/5/10
上映時間 97分
鑑賞 アマゾンプライムビデオ

 

ブラムハウス版は復讐だった!

ハリウッド版「スピーク・ノー・イーブル 異常な家族」は鑑賞済み。約1年遅れでオリジナルである本作を観て、異例の早さでリメイク版をリリースしたブラムハウスの気持ちが手に取るようにわかった。

「こりゃ絶対駄目だ! いかん! 早急に俺たちが救ってやらなければ!」

きっとそう思ったんだよね。
おれはそんなブラムを支持する。

いや、噂には聞いていたけど想像以上だったね。今まで「胸糞」って言葉をカジュアルに使っていたけど、全部取り消さなければならない。これが本物だ。ホント駄目だよ、あんなことしちゃ。「ラストが違う」ってここまで違う?

全員不幸。救いの一欠片もない。何も悪くない善良な人たちが理不尽に地獄へ引きずり込まれる。絶対に抜け出せない。誰も助けてくれない。

特に、”彼”が室内プールでプカプカ浮かんでいる場面はショックだった。あまりに不憫な”彼”を目の当たりにした時に確信した。

ブラムハウスは”彼”に復讐させてやりたかったんだよね?

リメイク版「スピーク・ノー・イーブル」の”改変“を思い出すと、その強い意図が明確に伝わってくる。こちらの世界線だったかもしれないあのシーンを重ね合わせると、悔しさで目頭が熱くなった。

前半はほぼ同じ。だけどラストに関しては「改変」なんてもんじゃない。180度違う。冷静に見れば、これって作品の意図を狂わすほどの改変でしょう。ジャンルがジャンルなら、「リスペクトがない」だの「原作レ◯プだ」だの大騒ぎになってもおかしくない絶対厳禁レベルだったよね。

それでもリメイク版が総じて高評価な理由は、多くの人の「本当はこっちの世界線が観たかった……」の意識の表明なんだと思う。エンタメ力の強いブラムハウスは、本作を観てこれを敏感にキャッチした。

両方鑑賞した人のほとんどは「胸騒ぎ」→「スピーク・ノー・イーブル」の順で観ていると思うけど、そのなかにはリメイク版を観たことで救われた人も相当いたんじゃないかな。これはブラムハウスにしかできないグッジョブだった……と、おれは大袈裟に評価する。

ただね、逆順で観た自分としても、オリジナル版も観ておいて良かったと思えるよ。エンタメにお化粧されたリメイク版で見えなかったテーマが、ノーメイクで剥き出しな「胸騒ぎ」ではよく見えた。

“ええカッコしい”な親切心や「相手に悪く思われたくない」という心の弱さから、絶望の底へ突き落とされるまでは一緒。ただし「胸騒ぎ」では、邪悪なホスト側夫婦は、実はいくつも逃げ道を用意していたんだってことに気づけた。”善良な”ゲスト側家族は、それらをことごとく見過ごしてしまう。

家族の命を危険に晒すような最悪な予感さえも、「いやいや、考えすぎだ」「悪気はなさそうだし」と自ら打ち消してしまうお人好しっぷり。これが、本作では「これでもか」ってくらい強調されてたよね。で、ラスト、

「だってキミらが差し出したんじゃないか」

――そんな邪悪な決めゼリフにも、ついつい納得させられてしまう始末。

それでも個人的には「主人公家族はなんて阿呆なんだ」「なんで抵抗しないんだ」なんて思えなかったな。きっと自分たちも、違和感だけは感じながらも、同じように逃げることはできなかったと思う。本作の主人公家族と同じ結末を迎えていたんだろう、と容易に想像つく。

違っていたら謝るけど、世の中のほとんどの人がそうじゃないか? 嫌な気持ちのまま「2日くらい我慢しよう」と開き直り、本作の主人公のように”深夜に黙って帰る”決断すらできず(結局引き戻されたけど)、結果、例外なく隠し部屋(?)の壁一面に貼られていた写真の一枚にされてしまう。

自分も娘の父親だから、否応なく彼らの行く末に家族を重ね合わせてしまって、最悪な気分になった。

リメイク版「スピーク・ノー・イーブル」の主人公家族のように勇敢に戦うことはできないまでも、せめて邪悪なものと絶対に触れ合わない警戒心くらいは持っておこう。

リメイク版では感じ取れなかったそんな危機感を、強烈に持たせてくれた点では凄い作品だったと思う。

二度と観ない。吐きそう

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