遺書(ブログ)

「内野手が6人だったらいいのに」

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今日は気分転換にファミレスで仕事することにした。
“ファミレスブースト”(言葉の意味はこちら)をかけるまでもないちょっとした作業だったが、早く終われば茶でも飲みながらHuluで映画でも観ればいい。

イヤホンでフェイバリットな音楽をかけながら、ノリノリでノートPCのキーボードを叩いていた。そのときのことである。

曲間に、隣の席から「・・・レアード・・・」というワードが聞こえてきた。

声がしたほうを横目で見ると、スーツのネクタイを緩めてリラックスした若者が2人。
休憩中の若手リーマンといったところだろう。くわえタバコで野球談義を交わしているようだった。

個人的にいま一番気になる話題だけに、耳元で流れている音楽をそっとOFFって盗聴態勢に入る。

「どうなの。ロッテファンとしては」

どうやら片方はロッテファンらしい。
レアードのロッテ入団に関して、ファイターズファンの声はTwitterで聞こえているが、ぜひともロッテファンの気持ちも聞いてみたかった。

「フロント頑張ったなって感じ。けっこう打たれてた印象だし、すげー嬉しいよ。しばらく外人バッターがダメダメだったから、そういう意味ではレアードはある程度期待できるしね」

若干の後ろ向き加減が気になるが、なにより「嬉しい」というワードが聞けたことが嬉しい。

ロッテはここ数年、外国人投手はある程度の成功を収めているものの、外国人打者は逆に気持ちいいくらいにハズし続けている。

この2年だけに限っても、ダフィー、パラデス、サントス、ドミンゲスと、ハッキリ言って惨憺たる結果だ。
ここまでくると、ファンとしては外国人打者が活躍するというイメージが沸かなくなっているのかもしれない。

「レアードは打率悪いけど、ホームランは20本くらいは打てそうだからね。少なくとも日本人投手に慣れているのはありがたいよ」

若干のネガティブはあるみたいだが、歓迎はされているらしい。
レアードファンとして「レアードはそれだけじゃないんだぜ」と口を挟みたい衝動に駆られたが、我慢した。

「レアードって守備どこだっけ」

“聞き役”が尋ねる。

――いいねえ、個人的にその視点からもぜひ話を伺いたい。

「サード。鈴木大地が余っちゃうんだよなぁ。鈴木はセカンドもショートもイケるんだけど、セカンドには中村奨吾、ショートには若い藤岡がいて、サードには本音は安田に出てきてほしかった。鈴木がスーパーサブになっちゃうかもしれない」

と、ロッテファンの彼。
現戦力と次世代候補の名前を挙げると、彼の表情が少し曇った気がした。

なるほど。
どの球団のファンにも戦力強化を手放しで喜べない事情があるんだなあ、と実感した。

ファイターズでいう王柏融のときと同じだ。
台湾の至宝の加入に歓喜しながらも、王が外野のポジション争いに加わることで、ポジションを脅かされるファイターズの現外野手のファンたちに動揺が走った。

新しい選手が入れば、誰かがはじき出される。そのポジションに控えていた”次世代候補”だって出場しづらくなる。
野球が9人制である以上、当たり前の理屈だ。

当たり前ではあるが、個人的に思い入れのある選手がはじき出される側に回れば、頭では納得できても気持ちはついてこられない。
そして彼にとって「思い入れのある選手」とは、今のところ現ロッテの選手である鈴木大地であり、安田尚憲なのだ。

もちろん、ポジション争いに勝つのは鈴木大地や安田の方かもしれない。しかし、それは同時に新戦力と期待しているレアードが不発だったことを意味する。
だからそれも考えたくない。

思考は停止し、やがて世界で一番切ない妄想に行き着くのだ。

ロッテファンの彼がボソッとつぶやいた。

「内野手が6人だったらいいのに……」

プロ野球ファンが常に対峙していかねばならない永遠のジレンマだ。

まあ、複雑な思いはあるようだが、ファイターズファンが愛したレアードは、間違いなくロッテファンに歓迎されている。そう確信した。
これがわかっただけでも、いちレアードファンとしてホッとした。

ある程度の成績をあげてくれれば、そのうちレアードの性格や人柄も認知されてきて、間違いなく千葉を代表する人気者になるだろう。

その時がきたある日、このロッテファンの彼が背番号54番のユニホームを着てZOZOマリンスタジアムで”レアードジャンプ”なんかしている。
ニヤニヤとそんなシーンを思い浮かべながら、おれはファミレスを後にした。

仕事は帰ってからやる。

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