ウォーキングとかジョギングって、行くまでがものすごく億劫だけど、行くと「行ってよかったな」と毎回思う。
これって早起きと並んで3大「やるまでが億劫だけどやるとやってよかったなと思う大正義」(そのまんま)だ。
もう一つは思いつかないけど必ずありそうだ。
ということで、今夜も背中にのしかかる「億劫」を無理やり押さえつけて、ウォーキングへ飛び出した。
家を飛び出して、イヤホンで耳をふさいで、スマートウォッチをスタートしてしまえば、10秒前の億劫は嘘みたいに消え去ることをおれは知っている。
アマゾンミュージックで作ったマイプレイリスト「鉄板」(約150曲)をシャッフルして、ノリノリで多摩川方面へ足を向ける。
このご時世だから、基本的にウォーキングは夜行くことにした。
先週、久しぶりに再開した際は五月晴れの昼間でとても気持ちよかったんだが、河川敷にも意外と人が多いことが気になっていた。
ただ、人通りの少ない闇の河川敷は50手前のオヤジでも結構怖い。
霊的な怖さではない。おれは幽霊は信じない。
信じない者の前に幽霊は現れない。
もっと物理的な怖さだ。
河川敷は野球場が何面も取れるほどのだだっ広い敷地だ。街灯も少なく静かだが、多少大きな音を立ててもその広大さにたちまちかき消されてしまう。
万が一。万が一だ。屈強な若者たちに取り囲まれたとしても、誰にも助けは求められない。
河川敷の弱肉強食ピラミッドにおいて最下段にいる50手前オヤジとしては、ウイルスほどに警戒せざるを得ない。
そんなエリア、通らなければいいのでは?
いや、もともとは人通りの多い繁華街や大通りを避けての河川敷ルートである。この緊急事態宣言下に不要不急のウォーキングをしているわけだから、人の近くに行くことはおろか、人とすれ違うことさえも極限まで避けなければならない。河川敷ルートをたどれば、どうしても通過しなければならない闇エリアは存在する。
そんなわけだから、おれは毎回ビクビクしながら早足で闇の河川敷を歩き抜けている。
今夜はこんなことがあった。
22時くらいだったか。もっとも街灯の少ないエリアだったので、イヤホンを外しながら暗闇を警戒レベル4くらいで早歩きしていた。すると微かに人の声が聞こえてきた。
警戒レベルを5に上げて周囲を睨みつけるが、あまりに暗いのでその声の主が確認できない。「これは確認は諦めて、声元から即座に離脱することに切り替えよう」。たぶん声はあっちの方から聞こえてきたから逆側に……と歩く方向を変えたその時である。
「ひぃ!」
「うぁ!」
闇で隠れていたベンチにつまずいた。
つまずいたとともに人の声がして、その声に驚いたおれも声を上げてしまった。声がした方向ではない(と思った)場所から声がした。これは驚く。
ハッとして目を向けると、そのベンチにはなんと複数人の影。
若い男女のカップルが怯えた顔でこちらを見ていた。
一瞬時が止まり、三すくみで睨み合う男女とおれ。
怯え顔の女性と、男性の方はそれを庇うように警戒MAXでこちらを睨みつける。
「いやいやお互い様だよ!」
「闇の中でナニしてんだよ!」
と思う以前に、気が弱いおれは、驚かしてしまった申し訳なさが勝ってしまう。
相手に見えたかどうかはあやしいが、軽く会釈をして黙って通り過ぎた。
ああビックリした。ドキドキした。幽霊かと思った。
たった今起きた出来事を反芻しながら、大げさではなく心臓のあたりをおさえる。そして10mほど歩いた頃だろうか。
「ビビったぁ……幽霊かと思ったよ」
背後から微かに、しかしハッキリと男性の心無い感想が聞こえてきた。
瞬間、思わず声に出た。相手には聞こえないレベルだが。
「いやいやお互い様だよ!」
どこの霊界に不識布マスクした幽霊がいるんだよ。
・・・とまあ、あまりに更新できないブログの路線を少しだけ変更して、こんなどうでもいい出来事もできるだけ書き残すことにする。そもそも自分用だ。こんなことがあったなあ、と死ぬ前に振り返るのが目的だ。
そして今、「今日は書けた」という満足感で一杯だ。クオリティは二の次だ。
思い出した。
3大「やるまでが億劫だけどやると、やってよかったなと思う大正義」。
3つ目はブログだ。