今日ファイターズのキャプテン・中田翔が、FAの権利を持ちながら、宣言はせず「球団残留」を発表した。報道によると、ついに複数年の契約を交わしたようだ。
ファイターズファンとしてこれは本当に嬉しい。ホッとした。
昨日まで中田の動向情報がまるでなく、ファンは不安な毎日を過ごしたろう。おれもその一人だ。
「残ってくれるはず!」と口では言うものの、想像というものはだいたい悪い方に流れていく。実際は、
中田がいなくなったらどうなっちまうんだ。
4番はどうする?ファーストは?
清宮?もちろん大歓迎だが、個人的にはもう数年ノビノビ育てたい。
キャプテンは?
西川?大田?いやコーチ兼任となった鶴でいいか?
ちょっと心もとないが、中田がいなくなっちゃうんじゃしょうがな・・・
って、うわぁヤメロおれ!
大丈夫、中田は残ってくれるから!
そんな繰り返し。
華のあるスター選手・陽岱鋼や、MVP・吉川の移籍の時はひどく悲しんだものだが、今思えば、あの頃はここまで不安な気持ちにはならなかった。
彼らは彼らの人生を歩めばいい。移籍しても応援してるぞ。
悲しかったけどオトナでいられた。
しかしだ、申し訳ないが、中田翔の場合は意味がちょっと違う。
もちろんFAは選手の権利であり、選手自身が最も自分を高く評価してくれる球団を選ぶべきだ。今年の中田なら、大金をはたいてでも欲しがる球団はあるし、移籍すれば活躍できるだろう。移籍したほうが、中田にとっていい野球人生を送れるかもしれない。そんなことはわかってるんだよ。
それでも「中田翔だけは」ファイターズにいてほしい。中田だけは特別なんだ。個人的な願いで本当に申し訳ない。
昨年のことだが、中田は打率.216、本塁打16本、打点67点という、残念すぎる成績を残した。
しかし、そんな”不甲斐ない”四番に対して、昨シーズン終盤の消化試合、外野席であの横断幕が掲げられた。
国内FAの権利を得て、移籍に揺れている中田へ送る、ファンからの切実なメッセージだ。
映像では何度もコスり倒された、かの有名な「お前が必要 中田翔」である。
他球団のファンの一部は、これを見てこう思ったかもしれない。
「いやいやいや、2割ちょっとしか打てない四番なんてさすがに必要なワケないだろ。逆にクセえよ」
そんな他球団ファンを一人ひとり横一列に並べて、目を見ながら教えてあげたい。
違うんだよ。君らは全然わかってない。
必要なんだよ。
たしかに中田はまるで打てなかったけど、ファイターズにとって彼は単なる「四番」じゃないんだ。
当時、入団して9年目。四番に座って早7年。ファンにとって中田は、すでにファイターズの顔であり象徴だった。
打とうが打たなかろうが、もはや彼自身がファイターズであり、中田の成績はファイターズの実力そのものなのだ。
たしかに、(あり得ないたとえだが)もしも四番が筒香かギータならもう少し勝てていたかもしれない。でもそれではファイターズじゃない。
中田が打って勝つファイターズが見たい。
弱かろうが強かろうが、ファンはファイターズ(=中田)を応援したい。
ファイターズがファイターズでいるために、ファンは中田翔を「必要」としていたのだ。
「お前が必要」横断幕に首を傾げていた他球団ファンに言いたい。胸ぐらをつかんで言い放ちたい。
中田翔とはね、そういう存在なのよ。 と。
これが「ミスター◯◯」の定義。
選択肢はいろいろあったはずだが、中田翔は今日、本当の”ミスターファイターズ”になることを選択した。こんなにに嬉しいことはない。
背番号6は、先代”ミスターファイターズ”田中幸雄が背負っていた番号である。11年前、中田がその偉大な番号を継ぐと聞いた時、オールドファンとしてはけっこう抵抗があったのを覚えている。
背番号重すぎないか?
ダジャレかよ。(田中→中田)
本当にコイツは打てるのか?
生意気そうな顔してるな。
「海の物とも山の物ともつかぬこんなヤンキーに幸雄の6番をあげやがって」……正直言うと、田中幸雄のファンだった当時のおれはかなり懐疑的だった。
しかし、あれから11年たった今、中田翔が来年も再来年も背負ってくれる「6番」を誇らしく思うおれがいる。
今のおれにとっては、かの巨人の3番に負けないくらい眩しい。
ファイターズは永遠に不滅です。