勝利投手 日本ハム 谷川 (1勝0敗0S)
敗戦投手 西武 増田 (0勝2敗8S)
昨日の主力4人に加えて、今川優馬も登録から外れた。それだけでなく、念のためか接触が疑わしい選手・コーチもベンチ外となり、22人のベンチメンバーで戦わざるを得なくなったファイターズ。
このあまりに過酷な逆風をひっくり返そうと、先発の上沢直之は初回から気迫の投球を続ける。伸びるストレートと鋭く落ちるカーブのコンビネーションがよく、ライオンズ打線に的を絞らせなかった。表情もいつものようなマウンド上の余裕の笑顔は少なく、鬼の形相に見えた。
西武打線に圧倒的な投球を続けていた上沢だったが、ファイターズへの理不尽な試練はたびたびエースを苦しめる。
まずは3回表2アウトランナー3塁。不運で出した先頭ランナーだったが、あと一人で事なきを得るという場面で、上沢の手元が狂って大暴投。1点を失ってしまう。
次に6回表1アウトランナー2塁。打席のライオンズ若林楽人がタイムをかけたのを見て投球動作をやめた上沢に理不尽にもボークが告げられた（これは後で必ず問題視してもらいたい）。1アウトランナー3塁となってしまい、次の源田壮亮のスクイズで得点に繋げられてしまった。
最終的に上沢は7イニングを3安打2失点。この不運な2失点を差し引くと他は圧倒的で、まさしくエース！と呼べる投球だった。
ただし、いまファイターズを襲っている逆風の本流、その影響をもろに受けている打線の方はどうにもならなかった。4回裏に渡邊諒のタイムリーで1点を返すも、その他は得点に繋がる気配もない。8回までで1得点。散発2安打では期待のしようがない。
打線が沈黙している間にも、ライオンズにはさらに2点を追加され、何もできずに3点ビハインドのまま9回裏を迎えてしまう。マウンドには、ここまで既に8セーブを挙げている守護神・増田達至。奇跡でも起こらない限り負けは確実な状態だった。ファイターズファンの誰もが、いまファイターズが置かれている理不尽な苦境をただ呪っていた。
しかし奇跡は起こった。
昨日一軍に上がってから全くいいところのなかった先頭の平沼翔太がしぶとく右前打を放つと、次の中田翔が一昨日に続いてパーフェクトホームラン（2ラン）をレフトスタンドに叩き込む。この瞬間に球場の空気は一変した。
続く近藤健介が、動揺した増田の低めスライダーを読み切り中前打。渡邊は三振に倒れるが、次の大田泰示があわや逆転サヨナラホームランかというフェンス直撃の二塁打で、一気に同点に追いついた。
その後石井一成を四球で出したところで、ようやくライオンズは増田を諦めて宮川哲をマウンドに上げるが、燃え盛った炎は消せなかった。
万波中正をセカンドライナーに打ち取るも、続く宇佐見真吾、杉谷拳士に連続四球で押し出し。ファイターズのサヨナラ勝ちとなった。
度重なる逆境を跳ね返してのサヨナラ勝利。しばらく忘れることのできない一戦になりそうだ。阪神から移籍した谷川昌希に移籍後初勝利が舞い降りた。
奇跡を呼ぶ中田翔の完璧ホームラン
ここでは2戦前（4/29）にも同じように中田翔のホームランを取り上げたが、贔屓と言われようとも、この試合でも「9回裏の反撃の狼煙となった中田の2ランホームラン」を挙げたい。おれたちの大将にまた素晴らしいホームラン、いや、あれを超えるホームランが出てしまったんだから仕方がない。
あの瞬間までは確実に負けムードだった。ここまで2安打。1点すらとてつもなく遠く感じるのに、この回で4点なんて想像すらできるはずもない。まあ、そうだな。「今日は負けだけど、大将、最後にいいとこ見せてくれよ」程度のものだった。個人的には。
しかし本当に打った。しかも「狙って打った」パーフェクトなホームランを。
ボールが2つ続いて、増田が高めに置きにいった球を中田は見逃さなかった。ビッグスイングで完璧に芯をとらえ、イメージ通りの角度、イメージ通りの弾道をたどって、イメージ通りにレフトスタンド中段にぶち込んだ。
中田が打つと打線が元気になる。そのことは、続く近藤健介、大田泰示の打撃を見ればわかること。この一撃によって、最後の感動的なサヨナラ押し出しに繋がっていく。
中田・近藤・大田といった主力によって同点に追いつき、チームのピンチに駆けつけてくれた宇佐見・杉谷ら代替指名選手に花を持たせる。深読みしすぎだろうが、杉谷のヒーローインタビューを見ながら、なんとなくそんな意味を感じてしまった。
