リリーフ陣はノーヒットノーラン
序盤で4点ビハインドを許しながら、コツコツと追い上げ1点差まで追い詰めた。最後1アウト2塁3塁という一打逆転の場面までいって負けたのが残念だが、あれは名手源田壮亮のエラーという怪奇現象のおかげなので、「やっぱり源田はエラーしなかった」という世界線で今後も頑張っていこうと思う。
今日のポジは、序盤の4失点を4失点のままキープし続けたリリーフ陣だ。
4回から2イニング投げた吉田輝星。6回のレジェンド宮西尚生。7回の杉浦稔大。8回の古川侑利。みんなそれぞれよかった。この4人が投げた4回以降はノーヒット(もちろんノーラン)だった。
序盤に壊れかけた試合を最後までハラハラドキドキ楽しませてくれたのは、この4人のリリーフのおかげだ。
吉田は覚醒した
なかでも特に心に残ったのは、吉田輝星の2イニングだ。オラオラと力と気持ちでねじ伏せていく投手は、観ているだけで気持ちがいい。今日に限ったことじゃないが、今年の吉田は投球に自信が溢れている。
「ボールに力が」とか「変化球にキレが」とか「スピードガン表示よりもなんたらかんたら」は、こちら素人なもんで、実際のところまあ「そんな雰囲気がある」くらいしか言えないんだが、「自信がありそう」「自信がなさそう」に関してなら、おれも”プロの人間”としては文字通り50年メシを食ってきた、そこそこベテランなので結構わかる。
「お前にこれが打てんのかよ」とバッターを見下すような(いい意味での)悪い顔。そしてチームメイトには「うるせー俺についてこい」という(いい意味での)クソ生意気さ。「ファンのみんな、俺を見てくれ!」といわんばかりのオーバーアクション。投手には大きな武器となる「お山の大将」感が今日は顕著に出ていた。
昨年たった一度だけあった一軍登板と比較すればはっきりわかるが、まるで別人のようだ。あの頃は、まるで別会社から連れてこられた出向社員のように、慣れない職場で一人おどおどしているみたいだった。今年の吉田は「ここ(一軍)が俺の職場だ」と言わんばかりに躍動している。
自信に溢れている奴には雑念がない。雑念がなければ本来のポテンシャルを発揮しやすい。これは野球に限ったことじゃない。
当然この一年間で技術も大きく向上したに違いないが、ベテラン人間としては、このメンタル面での変革も、吉田の今の活躍の大きな一つの要因だと分析する。
石井一成アーチストの軌道
打の方では5回表、石井一成のホームランだ。
序盤から4点を失いながら、ファイターズ打線は4回までノーヒットと、ライオンズ先発松本航に完全に手玉に取られていた。
この回先頭の野村佑希が突破口となるツーベースで出塁。「この試合で食らいついていくには、絶対にこの貴重なランナーを還さなければいけない」という局面で飛び出した貴重な一発だった。
一気にビハインドを2点差まで詰めた、という価値の話だけでなく、ホームラン単体としてホームランソムリエ(自称)のおれ好みの弾道だった。
ほぼレベルスイングで振り抜いたにもかかわらず、ボールに独特の角度がついて外野へ飛んでいく。高く打ちあがった球は遥か上空でひと伸びふた伸びしながら、スローモーションのようにライトスタンドに吸い込まれていく。
決してジャストミートじゃない。でも角度と力で届かせてしまう”アーチストの軌道”。
こんな石井のホームランを見せつけられるたびに、しつこいくらいに思う。
「なぜこんな弾道を打てるバッターが、年間に4本しかホームランが出ないのか」
今年はすでに2本。今のところ若手中心のオーダーの中で押し出された感はあるが、中軸を担うこともある。ビッグボスには打撃も期待されているようだ。下位打線で”つなぎ”の役割を主に担ってきた昨年までとは少し状況が違う。
同ポジションでは水野、上野など若手の台頭もあるが、それすらも力に変えて、石井には願わくば20本、最低でも10本は打ってくれることを密かに期待している。