2種類のホームラン
前日東京ドーム第2戦のブログで「今日は今川優馬の日」だと書いてしまったが、実は前後編に分かれた2部作だった。前日の9回裏、最終打席でライトフライに倒れた後に見せた悔しい表情も、翌日の後編へのフリだったと思うと合点がいく。
前日は「3安打1本塁打2打点」。一選手として最高といってもいい成績だったが、この日は「4安打2本塁打3打点」と、すべて1つずつ上乗せしてきた。今川はこの2試合で9打数7安打と大暴れ。当然、前日に立てなかったお立ち台にも立った。
この日の今川は第一打席、第二打席となんと2打席連続でホームランを叩きこむんだが、特に1打席目、内野席の真横から見たとんでもない弾道が今も頭にこべりついている。
1球目ボール球のストレートを見送った後、タイミングを取るのに苦労しているようなファールを2本。やや首をかしげながら構えた4球目を完璧に捉えた。
前日に続いて「打った瞬間」だった。一塁へ歩き出しながら、ベンチに向かって誇らしげにガッツポーズを突き出す今川。測ったわけではないが、打球角度は約45度。少し上がりすぎくらいでも、今川のパワーならば十分に届く。誰にも真似できないような弾道で高く舞い上がり、打球はレフトスタンド上段まで落ちてこなかった。
2打席目のホームランも、真逆のタイプで興奮した。2球目の内角ストレートを「待っていた」とばかりに打ち付けると、今度は20度くらいの低い弾道でレフト方向へ吹っ飛んでいった。フェンス直撃かという強烈なライナーが、高度を落とさず一直線にレフトスタンド最前列に突き刺さったのは爽快だった。
前日の”最後の打者”となってしまい、肩を落としながらベンチに戻る今川のシルエットがフラッシュバックした。それとは対照的に喜びを爆発させるその姿は、前回の伏線をきっちり回収する出来すぎた海外ドラマを観ているみたいだった。
勝敗を分けた名手対決
この試合の勝因には、第一にこの今川の爆発、第二に5安打1四球しながら無失点で切り抜け続けた伊藤大海の粘投、そして野村佑希の3回裏ホームランと5回裏の効果的な追加点が挙げられると思うが、ここではあえて谷内亮太を取り上げておきたい。
谷内には、個人的に大学の遠い後輩という意味で、思い入れが強い。
先発サードの谷内は初回、先頭打者福田周平の三塁線への強烈なゴロ打球を華麗にキャッチ。その強肩で、一塁から一番離れた場所から俊足福田を刺した。
現地ではよく見えていなかったので、帰宅後にパ・リーグTVでじっくり”鑑賞”させてもらったが、想像の遥か上をいくたまらんビッグプレーだった。
プレー単体として何度観ても飽きないほどの超絶美技であることはもちろん、「初回先頭打者の出塁を防いだ」という価値は相当に高い。あれがもし抜けていたら、先発の伊藤はこの後どうなっていたかわからない。
谷内は2回裏に3塁線へタイムリーを放つんだが、この打球が「初回に自分がアウトにした福田の打球とほぼ同じコースだった」というオチもいい。
バファローズのサード宗佑磨も名手だが、あの打球を「捕れたチームと捕れなかったチーム」の差で勝敗が決まったような、象徴的な名手対決だったように思う。ちょっと言い過ぎか。