ジャンル | ホラー / スリラー / ドラマ |
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製作国 | アメリカ |
製作年 | 2024 |
公開年月日 | 2024/6/21 |
上映時間 | 102分 |
鑑賞 | 109シネマズ川崎 |
“シャマラン病”は観るな
こんにちは、観た人。
ぶっちゃけどうだった?
この作品の、避けては通れない「看板」にもなっている通り、娘シャマラン(当時23歳)のデビュー作。どこまでプロデューサーの父シャマランが金と口を出したのかは不明だが(おれが父だったら相当手伝う)、とても処女作とは思えないほどのクオリティだった。
何も起こっていない序盤から、なんかワクワクさせられる展開が父っぽかった。何も起こっていないのに、主人公の一挙手一投足が気になる。
「車で一日かかる場所にインコを届けろ」という変な指令。
夜の街に自分からナンパされに行く主人公。
偽名と偽職業「バレリーナ」。
道中にカーラジオでかかる曲。
それを聴きながら口ずさむ歌詞さえも「絶対に何かの伏線だ」と脳みそが忙しい。まだ一切何も起きていないのに。
これ、絶対シャマラン病でしょう。
我々が良く知るあのシャマランとは別人なのに、苗字に「シャマラン」とつくだけで、すべてが意味ありげに見えてしまう。このデカすぎる”ブランド名”が「味方したか、邪魔したか」といわれれば、鑑賞後の感想としては「邪魔になってたんじゃないかな」と感じた。
ところで確認だけど、これをここまで読んでくれた人は「観た人」だよね? ネタバレしちゃうよ?
……まさかね、怪物ホラーだったとは。最初からそうとしか思えない展開だったけど、自分はそのさらに裏側までくると期待しちゃった。
もちろん設定は予告編で知っていた。
「森の中のガラス張りの小屋に閉じ込められた4人の男女。どのようにして逃げるのか? そして『監視者(ウォッチャーズ)』とはいったい何者なのか」。
夜に小屋を出ると「怪物」に襲われ、死ぬ。実際、そういう描写もあった。決定的な”それ”を見た上でも、「馬鹿にするなよ、どうせ怪物に見せかけた別の何かなんだろ? おれにはわかってるぞ」と、一切信用しなかった。そんなわけだから、正体がわかったとき、
「妖精かい!!!」
と大声でツッコんだ(心の中で)。いや、悪いのは全部”シャマラン病”で脳がバグっているおれの方だ。
「監視者」の正体が判明した後にもう一展開あり、ラストで一応どんでん返しがあったんだけど、ぶっちゃけあれもどうだった?
妖精(=監視者)は人に擬態する能力があり、よく考えると仲間の一人マデリンが間接的に脱出を主導していた。で、謎を解いていく過程で「ハーフリング(人間と妖精のハーフ)」なる者がいることもわかっている。ハーフリングは光を浴びても大丈夫だし、森からも出られる。
そんなわかりやすい情報から、マデリンが本性を現したときも驚きはせず、「まあ、そうなるよねえ……」となったよね。
結局、おおまかな真相はこうだ。
十数年前にあの森で妖精を研究していた博士が、たまたまハーフリングを発見し、彼女(?)に亡くなった愛妻そっくりの姿に擬態させていた。それがマデリンだった。
マデリンは博士が亡くなった後も、ここに迷い込んできた人間とともに脱出方法を探り出すことで、人間社会へ入り込もうと画策していた。そしてついに見つけて、主人公とともに脱出に成功。
最後は赤毛の少女となって、人間社会に溶け込んでいく……。
メタファーレベルではもっと考察の余地はありそうだけど、物語レベルではだいたいそんな感じで合ってるよね?
いいじゃん。それならそれで面白い。モヤモヤレスなスッキリ作品。
父シャマランのように”投げっぱなし伏線”は少なく、実は混乱させるようなミスリードもない。振り返ると無駄なシーンもほとんどなかった。小細工のない本格怪物スリラーとして、きっちり作られた作品だと思った。
「シャマラン」という苗字だけが、勝手に「いや、こう思わせてこうなんだろ?」「いやおれは騙されねえぞ」などという余計な雑音を脳内で鳴らし続けていた。おれが悪いのは承知の上で言うけど、邪魔だったね。
とはいえ、「シャマラン」ブランドがなければ無名の23歳の新人監督の作品なんか劇場鑑賞することもなかったわけだから、痛し痒し。騙された感はあるけど(おれが悪い)、観てよかったと思う。
ともかくイシャナ・ナイト・シャマランという新人監督の今後に期待するとともに、「やっぱ父シャマランの新作でコロっと騙されたいな」と感じた鑑賞後のおれだった。