遺書(ブログ)

Winny

更新日:

ジャンル 社会派 / ドラマ
製作国 日本
製作年 2023
公開年月日 2023/3/10
上映時間 127分
鑑賞 アマゾンプライムビデオ

あの時代よくいた天才青年

白状すると、Winnyの頃には卒業していたけどWIN MXは使っていた。そんな世代。

あれから20年以上が経ち、現代の価値観を持った自分から見ると信じられないことだけど、罪悪感なんて一かけらもなかった。なかにはもちろん「これは良くない!」と警鐘を鳴らす人もいたと思うが、正直当時はまったく見えなかった。現代と比較して「著作権」に対する一般認識が、それこそ1メガと1テラほど激変したのはこの身で実感している。

興味のある話題だったのでよく覚えてるなあ「Winny裁判」。劇中にも出てくる例え「罪人はナイフを使った人であって、ナイフを作った人ではない」も、当時どこかで聞いて「そうだよ。なんで作った人が逮捕されるんだよ!」なんて、なぜかあっち側から憤っていたものだった。

劇中、金子氏を救うために”お仲間”が団結して弁護費用をカンパした感動エピソードがあるんだけど、冷めた目でツッコんだ「いやいや、お前らは”使った側”だろ!」が、そっくりそのままブーメランで自分にも突き刺さって、ヘコんで……。

現代の感覚で当時を振り返るのって、なかなか痛いね。

そのチクチクに耐えながらも、ちゃんと観てよかったと思う。これまで知った気になっていた時代の背景が、映像化されたことで当事者たちの心情までよく見えた。

金子氏はピュアだった。「いい世の中にしたかった」「未来の技術者のために」ってのも本心だと思うけど、実際はそんなのは後付けで、純粋に技術者として「思いついたから作った」というのが本音だったんだろうなと思う。直接的にはそんな描写はなかったけれど、「彼ならそうするだろう」と、見えない内面まで想像できる説得力を浮き彫りにした東出昌大の役作りがよかったね。

お気に入りのシーンは、裁判中に金子が自らの経歴として「ネコファイト」を説明しているうちに夢中になって、周囲全員を置いてけぼりにしちゃうところ。鼻を膨らませながら得意げに喋る金子と、ポカンとする判事と検事、気まずそうに話を止める弁護側。全員に共感できた。

金子は「天才だ」「一番脂の乗った時期を潰されたのは損失だ」という見方もあるけれど、この作品を観てむしろ「あの時代によくいた”天才的な若者”のひとりに過ぎなかったんだな」という感覚になった(あの頃いっぱいいた)。同年代ということもあって、より身近に思えるようになった。

鑑賞後、YouTubeで「ネコファイト」の動画を見て、笑いながらちょっとウルッときた。

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