ジャンル | ヒューマン / ドラマ |
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製作国 | 日本 |
製作年 | 2022 |
公開年月日 | 2023/2/10 |
上映時間 | 99分 |
鑑賞 | アマゾンプライムビデオ |
登場人物全員映画好き
大きな声では言えないが、小出恵介はマイフェイバリット若手俳優だった。
どんな作品でも常に落ち着いていて、知的で、背筋が伸びていて、明るく堂々と喋る優等生的な役ばかり。もちろん、それぞれのキャラクターによって、人に言えない悩みがあったり、事件に巻き込まれて狂ったりと”個体差”はあるんだけど、ハッキリ言っちゃうと「だいたいが小出恵介じゃん」なタイプの俳優だと思う。(「キムタクじゃん!」的な)
だけど、それが落ち着くんだよなあ。
あの表情であの声。演技力も確か。オッサンが言うとちょっとややこしいかもしれないけど、数少ない「男前」「カッコいい」と思える俳優だった。TSUTAYA時代(唐突な造語だけど意味わかるよね)は、キャスト欄を探してよく”指名借り”していたな。大きな声では言えないから、2~3人しか読んでいないここにひっそり書いておく。
さて、いい映画だった。
いい映画だったし、あの頃の小出恵介だった。ストーリーは、身も蓋もない言い方をすると、タイトルとジャケとあらすじから想像できる範囲から一切はみ出さない。だいたい読めるでしょ? そうそう、それで合ってる。
小出恵介演じる一文無しの元映画監督が潰れかけの映画館とともに再生していくという、何のヒネリもない人情ストーリーだった。(これが城定監督?)
登場人物が全員”映画好き”というのがミソだね。展開に意外性はなくても、同じ映画好きとして登場人物全員に共感できる。映画館オーナー(吹越満)としてボロボロの映画館を存続させたいと思うし、元監督(小出恵介)として作りかけの映画を完成させたいと思うし、映画ファン(宇野祥平)としてその作品を絶対に観たいと思う。全員視点は違っても向いている方向は同じ。一切トゲなんかない(マンガみたいな悪者は登場する)。
BGMのジャズがいいんだよ。主張しすぎず、奥の方でいつも静かに流れている感じ。寂れた映画館にマッチする。中盤でそのジャズに合わせて小出恵介と渡辺裕之演じる映写技師がなぜかソシアルダンスを踊るシーンがあるんだけど、渡辺氏が撮影後間もなく亡くなってしまったことを考えると、なんだか意味ありげに見えちゃって目頭にきた。
「ここが面白かった!」「ここがハラハラした!」「ここが感動した!」ってのはほとんどなかったけれど、ファーストシーンからエンドロールまでずっと気持ちいいやつ。普段こってりしたド派手洋画ばかり選んで食っているので、たまにはこんな渋いお茶みたいな優しい邦画がじんわり沁みる。
この作品で本格復帰した小出恵介には、今後個人的にも注目を再開したい。まだ大きな声では言えないけど。