ジャンル | 任侠・アウトロー / アクション / 青春 / バイオレンス |
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製作国 | 日本 |
製作年 | 2023 |
公開年月日 | 2024/9/27 |
上映時間 | 112分 |
鑑賞 | チネチッタ川崎 |
「ベビわる」は日本映画を救える
いや、最高だったね。
1作目の”緊迫感と日常の絶妙なバランス”から、前作「2ベイビー」では一気にゆるふわ方向へ舵を切った感があったが、本作「ナイスデイズ」でバランスをきっちり戻してきた。大満足。
やっぱり敵役は最強じゃなきゃ。
“最強の敵”と「殺るか殺られるか」の死闘。この緊迫感は、「ベビわる」シリーズがいかに日常パートがウリとはいえ、絶対に必要な要素だと強く感じた。
「2ベイビー」も好きだから比較するのは憚れるんだけど、前作は緊迫感がだいぶ削られてたよね(その分ユル会話は面白かったけど)。
主人公ちさとの「脱力→殺気」のスイッチ演技(っていうのかな)が、本作では「1」以上に堪能できた。焼肉の話をしていた直後に”仕事モード”に入るあの目にゾクッとする。個人的には、高石あかりのこの演技こそが「ベビわる」の最大の魅力だと思っていたりする。
それから、誰もが感じただろうけど、池松壮亮がまあすごい。
あの”世界の伊澤沙織”とアクションで互角にやり合っていた。
ずっと「天才子役上がりの超演技派」だと認識してきたけど、今さら「こいつ一体何者?」と感心してしまった。
ちさと・まひろの最強コンビが2人がかりでかかってもまるで歯が立たない……というのは物語上の描写だけど、その十分な説得力をまとった体つきと動きのキレに惚れ惚れした。アクションだけでなく役作りも半端じゃなかったよね。
表情を変えずに人を滅多刺しにするような冷酷な殺し屋なんだけど、突然キレたり紳士的な振る舞いをしたり、妙に真面目だったり狂ったり、気まぐれで敵に手を差し伸べたり。明らかなサイコパスではあるんだけど、もっと掴みどころがない。病的な感じ。これが本当に怖い。マジで殺される。
もう一人のゲスト俳優、前田敦子もよかったよね。
殺し屋協会の別の殺し屋と共闘するってだけでもワクワクするんだが、前田演じる入鹿みなみはキャラもよかった。
真面目で融通の利かない、まさしく「お局」って感じ。だからZ世代のテキトーなちさまひコンビとまったくソリが合わない。序盤はここの衝突が笑いどころの中心だったね。特にちさととのイヤミ合戦では劇場でも大爆笑をさらってた。いいコンビ。
ずっと「AKB上がりの知名度女優」と認識してきた(敬遠すらしてきた)けど、今さら「いいコメディ女優だな」と感心してしまった。
「ベビわる」シリーズもヒットを重ね、キャスト面だけでも、こんなふうに回を追うごとにぐんぐん格が上がっている。1作目がほぼ全員無名(高石・伊澤含め)キャストから始まり、前回は丞威と濱田龍臣、今作では池松壮亮と前田敦子が加わった。
なんかこの調子なら、そのうち敵役に岡田准一とか鈴木亮平とか、さらに海外にわたってマ・ドンソクくらいなら(距離的に)あり得るんじゃないか?なんて妄想も膨らんじゃった。
インフレしていく役者陣だけじゃない。アクションもシナリオもしっかり進化している(CGだけイマイチ)。手間とお金と一流の人材にかかれば、もっともっとすごい作品が撮れる。
「日本映画界もようやく阪元裕吾監督に大きくベットし始めたな」と感じた傑作だった。