ジャンル | ラブロマンス / 伝記 / ドラマ |
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製作国 | アメリカ=イタリア |
製作年 | 2023 |
公開年月日 | 2024/4/12 |
上映時間 | 113分 |
鑑賞 | 早稲田松竹 |
来世はプリシラに生まれ変わりたい
今春に劇場鑑賞しようと思っていた「プリシラ」と「チャレンジャーズ」が、早稲田松竹(名画座劇場)で2本組でお得に観られるとのことで、10月4日に仕事ついでに立ち寄った。(~10/4)
早稲田松竹 official web site | 高田馬場の名画座
まずは「プリシラ」。よかった。
「ヴァージン・スーサイズ」も「ロスト・イン・トランスレーション」も「マリー・アントワネット」も大好きで(この3本しか観てないけど)、今作を持ってもハズレなし。どうやらソフィア・コッポラの世界観(というか視界)がドンピシャみたい。
鑑賞済みのソフィア監督作4作に共通するのは、誤解を恐れずに言うと「物語性が薄い」ことだと思う。どれもセレブな家庭の女の子が主人公で、彼女らの煌びやかな生活にほんの少しの”リアルな悩み”を添えて、こだわり抜いた美しいビジュアルで描き出す。基本的にメッセージはあまりない(と思う)。
さらにイヤミったらしい表現を使うなら、
庶民からは想像もつかないようなセレブ世界の人間を主人公にしながら
「私たちだって辛いことや悲しいこともあるんですのよ」
っていうのが大体のテーマ。庶民には一切寄り添うことはない。
でも、これがいいんだな。
自身も超絶セレブの娘として育ったという「お姫様」にしか描けない世界観。真逆に位置する「貧乏オジサン」なのに、どういうわけかワクワクする。きっと前世はお姫様だったんだと思う。
エルヴィス・プレスリーの妻プリシラ役を演じたケイリー・スピーニーちゃん、めちゃくちゃ可愛いねえ。小さくて童顔で、まさしく「おチビちゃん」(エルヴィスがそう呼ぶ)といった感じ。実年齢を調べたら26歳なんだって。信じられない。
父親の赴任先・西ドイツでの薄暗い暮らしから、スーパースター・エルヴィスに見初められてメンフィスの豪邸に来てからの目が眩むようなキラキラ生活。
古建築フェチとしては1960年代の豪邸がいい。ギリシア宮殿のようにどっしりした家構えに、ちょっとした公園のようなデカい庭。巨大な門前には常にファンたちが溜まっている。内装はバロック時代かと思うほどの壁や扉や豪華な調度品。フカフカなソファーと大きなベッド。選び放題のドレス。「前世お姫様」オジサンとしては、「こんな家で暮らしてみてえ~」ってなる。
学校シーンも好きだった。エルヴィスと暮らしているとはいえ、プリシラはまだ16~17歳で学校に通わなければいけない年齢。クラスメイトに「あの子がエルヴィスの彼女よ」なんて後ろ指差されるという”気まずさと優越感”が出来の悪い少女漫画の実写化みたいで、逆にリアルでゾクゾクした。すげー楽しそう。
学校を無事卒業してエルヴィスと籍を入れてからは、お約束通りだんだんと暗雲が立ち込めていくんだが、それでも羨望は薄れることはなかった。あの程度で「私たちだって辛いことや悲しいこともあるんですのよ」を主張したいなら、ソフィア監督ちょっと薄いぞ。ま、そこがいいんだけど。
来世はプリシラに生まれ変わりたい。オジサンでもそんな乙女の夢を見られる2時間だった。今気が付いたけど、これA24ブランドだったんだね。