ジャンル | ホラー / スリラー |
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製作国 | アメリカ |
製作年 | 2024 |
公開年月日 | 2024/10/18 |
上映時間 | 118分 |
鑑賞 | TOHOシネマズ川崎 |
人間、ジョン・クレイマー
ソウシリーズは一応すべて鑑賞済みだけど、それぞれ単発で観てきたので、脳内でタテではほとんど繋がっていない。覚えている登場人物はジョンとアマンダくらいのもので、すべてのシーンがシャッフルされている状態。
結論を言うと、それでまったく問題なかった。
間違いなく、初見でも「舐めてた相手が殺人マシーンだった」系として存分に楽しめる。自分と同じように「観たけど忘れちゃった人」も予習復習は不要。前情報として「ソウ1と2の間の出来事」ということだけ頭に入れておけば雑音はない。
今回は新鮮だったよね。
これまでの9作はジョン・クレイマー(およびアマンダ)が明確な加害者だったのが、今回はジョンが悪質な詐欺の被害者となって、加害者たちに復讐するという構図。
(ジョンは「復讐じゃない」と言っているけれど)
だから観客側は初めて素直に「グイグイやったれジョン!」って気になれる。
だってほら、今までの「(ゲームの)被害者」って、どこか憎めないというか、ハラスメントとかヤク中とか自殺願望とか、「自分だって一歩間違えばそちら側にいきそうな普通の人々」だったじゃない。そのたび「お前は命を大切にしていない!」なんて説教を食らっているけれど、「そんな奴は世の中に10人に1人くらいはいるだろうに」という理不尽さがあって、結構気の毒に思っちゃう。(だから「被害者」と呼ぶ)
しかし今回は違う。ゲーム対象者は正真正銘の極悪人。今までと正反対の目線で「フハハハハ馬鹿め、相手が悪かったな!」という、シリーズ初のカタルシスがあった。
いやあ、今回もゲームがゴアかったね。相手が病院関係者だったからか、メスとか放射線とか頭蓋骨ドリルとか。正直「ゲーム大喜利」のアイディアとしては乏しかったけれど、やっぱり「自分の肉体を切り取る」系はシンプルにめちゃくちゃ痛いんだよ。
鑑賞中ずっと「うわぁ……」って顔をしていたし、ショッキングなシーンがくるたびに、劇場の暗闇でお客さんのシルエットもスクリーンから顔を背くように動いてた。そう、これだよこのストレス。これが「ソウ」!
本作では「人間、ジョン・クレイマー」が観られたのも良かった。
脳腫瘍で余命宣告を受けて絶望するジョン。
小悪党の罪を見て思わず殺人ゲーム(眼球スポイト)を妄想するジョン。
癌患者の集いで、他の参加者を気の毒な表情で見つめるジョン。
仲間から明らかな詐欺話を持ち掛けられて希望に胸を膨らませるジョン。
女の子に優しくされてキュンとしちゃうジョン。
少年とたわむれる笑顔のジョン。
未来に差し込んだ光に、つい涙するジョン。
激しい怒りに燃えるジョン。
これまで「主役」としながらも「最凶の裏方」という役回りで、冷たくボンヤリしていた「ジョン・クレイマー」の輪郭が一気に見えた。
ハッキリ言って1~3のようにどんでん返しを伴うような脚本の妙はない。かといって、4以降のようなただの「殺人ゲーム大喜利」の羅列でもない。往年の「ソウ」ファン目線なら「中途半端」ともいえるが、人によっては「ちょうどいい」「絶妙」ともいえる。個人的には後者「ちょうどいい」派。あまり頭でっかちにならずに、他のスプラッター映画にはない「ソウ」シリーズならではの楽しみ方はできた。
情報によると、すでに11作目(「ソウXI」?)の製作も決まっているんだそう。本作が「1と2の間」というピンポイントの時系列をピックアップしていたが、今度はどこをピックアップするのか。それとも新たな「ジグソウ」が誕生するのか。
次の展開はなかなか勝負だよね。楽しみに待ってる。