ジャンル | サスペンス・ミステリー / スリラー / ドラマ |
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製作国 | アメリカ |
製作年 | 2024 |
公開年月日 | 2024/10/25 |
上映時間 | 105分 |
鑑賞 | 109シネマズ川崎 |
鼻をほじりながら観られるシャマラン
シャマラン信者の人たち、どうだった? 面白くなかった?
おれは結構気に入った。
これまでの「どんでんを返さねば…」とか「デカい仕掛けを作らなければ…」といった強迫観念的な”シャマラン味”から自己解放して、比較的スタンダードなサスペンスに仕上げてきた感じ。かといって、まったくの「普通」というわけじゃなく、後半は「そうなるのか!」という思わぬ展開に持っていく監督のユニークさはしっかり残っちゃう。
このバランスが意外と心地よかった。
観客(=おれ)の方も、これまでのような「シャマランだし絶対何かやってくるぞ」「これは何かの伏線かもしれないぞ」みたいな警戒心は捨てて、鼻をほじりながら”流れ鑑賞”して大丈夫だった。そうだ、それだ。
これは「鼻をほじりながら観られるシャマラン」だ。
脳みそはほとんど使わなくていい。シャマラン信者の中には「物足りない」「シャマランらしくない」と感じる層もいると思うが、個人的には「シャマラン監督、これくらいがちょうどいいよ」とファンレターを送りたいような気分だった。
中盤までは、予告編で予告されている通りの展開。3万人規模のスタジアムコンサート会場におびき出された連続殺人鬼(ジョシュ・ハートネット)が、300人の警官が取り囲む厳戒態勢の会場から「どう脱出するか」という構造だった。「それは上手くいきすぎじゃないか?」という”主人公の安全装置”が多すぎる印象だったけど、ハードルをクリアしていくテンポがよかったので、鑑賞時はほとんど雑音にならなかった。
シャマラン監督の愛娘サレカ・シャマラン演じる世界的スター「レディ・レイブン」のステージ中、というタイムリミットも相まって、結構ハラハラドキドキさせられたな。サレカ、美人で歌上手い。
ここまででも、十分上質なサスペンスだったんだが、中盤からがシャマランの本領発揮だった。それまでの殺人鬼の視点から、予想しなかった人物へと視点が移り、なんならジャンルも変わってしまった。
味わいがまるで違う2作品を、2時間の中で一気見した感覚。その”2作品”とも、クオリティはもはやベテラン監督の安定感があり、シャマラン信者の一人としても十分に楽しめた。お得。
ただ、前述した「主人公の安全装置」があまりに露骨な点と、「結局、どちらも決め手となるのは力技かい!」というヒネリの弱さは、鑑賞後1日経って気になってしまった。
個人的に、シャマラン作品は「すげえ!」と「イマイチ……」が二極化される印象があるが、本作ははじめて「普通!」の作品だったかも。いい意味で。