昨日、どういうわけか映画『きみの友だち』を見たい衝動に駆られたので、DVDをパソコンにセットし、震える指で再生ボタンを押した。
『きみの友だち』は、”おれ的何度も見たい映画”3本の指に入る大切な1本である。
ストーリーはこんな感じ。アマゾンからまんまパクる。
交通事故の後遺症がきっかけで、まわりに壁を作って生きてきた恵美。幼い頃から体が弱く、学校を休みがちなおっとりした由香。クラスで浮いてしまいがちな2人は、ある日を境にかけがえのない絆を深めていく―――。
(笑)。
これを読んで「おお、面白そうだ。観てみよう!」となる人は、まずいないだろう。
いないだろうが、確かにこう書くしかないと思う。
ミステリーのような謎解きもなければ、明るく笑い飛ばせるコメディでもない。最近のドラマ映画のようなキラキラな恋愛もない。今流行りのダンスあり歌ありのエンタメミュージカル映画でもない。
2人の女の子の友情を淡々と描いた地味な映画である。
ヤフー!映画の評価も3.67。得点も地味だ。
それでも、おれはこの映画をたぶん年に一度は観ているし、これまで10回以上は観たと思う。
おれ評価は100.00だ。
何がいいのか。
とにかく、これを見ると、何回観てもおれは5回泣く。
おそらく廣木監督の泣きツボがピッタリあっているんだと思う。
この作品は、主人公の恵美と由香の物語を中心にして、それを取り囲む少年少女たちの、それぞれが持つ「友だち」関係の悩みを描いたオムニバス形式となっている。
親友に彼氏ができただけで心因性視力障害になってしまうハナ。
学校のスターになってしまった幼馴染に憧れる三好くん。
デキる後輩に嫉妬して威張り散らす佐藤先輩。
大人からみると馬鹿馬鹿しいと思えることが、思春期の少年少女にとっては“人生のすべて”と思えるほどの大問題だった。
主人公の恵美は彼らに少しづつ関わっていて、時に優しく、時に冷たく彼らを癒やす。
もう取り戻せないほろ苦い記憶。
ロケ地となった山梨県甲府市の空気感と、主張しすぎない美しいBGMが、何十年も開けずに錆びついていた記憶の引き出しをガンガン開けていき、その度におれの顔は涙でぐしゃぐしゃになる。
たぶん、現在バリバリ思春期真っ只中の中高生には、日常過ぎて逆に響かないんじゃないかと思う。
語弊があるかもしれないが、この作品は、当時55歳の廣木監督が描き出す、思春期のピュアな感情を忘れかけた中年のための映画だと思う。
ところで、おれはこの恵美という主人公のファンだ。
この作品を何度も観られるのはそのせいもある。
作品内では中学生から高校生、20歳まで描かれているが、とにかく彼女のキャラクターがいい。カッコいい。演じた女優も、当時15歳だったと聞くが、とてもいい。
幼少の頃から足が悪く常に松葉杖をついているが、決して卑屈にならない。まわりのみんなに何を言われても気にしない。
「私は”みんな”なんて信じない。本当に大切な人さえいればいいから」
そう言うように、彼女は”本当に大切な”友だちである由香の存在だけで、不便な毎日にも、足が悪いせいで友だちができない中学校生活にも折り合いをつけてきた。
とても強い女の子で、どんなに辛くても泣くことはなかったが、”本当に大切な”由香が亡くなった時だけ、声を上げて泣いた。ここでおれも声を上げて泣く。
心から思う。
恵美には本当に幸せになってほしい。
作中で20歳になった恵美に彼氏ができて何かいい感じで映画は終わるが、おれは彼には懐疑的である。
彼女に会うために、仕事をほっぽらかして(?)年中山梨で過ごしているジャーナリスト。おい、お前に恵美を幸せにできるのか?
恵美を不幸せにしたらおれが絶対に許さないからな。
覚えとけ、松井裕樹よ。