遺書(ブログ)

HERE 時を越えて

投稿日:

ジャンル ヒューマン / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 2024
公開年月日 2025/4/4
上映時間 104分
鑑賞 キネカ大森

「これが人生」それでも「素晴らしい」

歴史的な古建築を巡るのが趣味なので(個人的に「江戸東京たてもの園」はディズニーランド)、こうした古い建物内で当時の人々の姿を重ねて妄想することはよくある。

「この部屋で色んな家族が団らんしていたんだろうな」「この部屋で奥さんが食事を作ってたんだろうな」「この裏庭では子供たちがキャッキャと遊んてたんだろうな」。

馬鹿みたいだけど、現場に立ってそういった妄想をするのは本当に楽しい。何百年もそのままの状態で目の前に存在することに感動するし、理解し難いと思うけど、思いを馳せすぎて時々泣けたりもする。あまり知られてないけど、これってめちゃくちゃエンタメだと思うんだよね。

「それを映像化しました!」

という作品。
よかった。これは個人的に超ツボに入った。

行きつけの映画館で、レア・セドゥの「けものがいる」(こちらが本命だった)とともに二本立て上映されていたんだけど、断然こちらの方が好きだったね。

あるアメリカの家のリビングに「設置」(でいいよね)された「時空固定カメラ」(でいいよね)の前で繰り広げられる、そこにかつて暮らしたいくつかの家族による人間模様。

家が建つ遥か昔のネイティブアメリカンのカップル、最初の家主ジョンとポーリーン(20世紀初頭)、発明家の夫妻(一次大戦から二次大戦の時期)、そして物語の中心となるアル(ポール・ベタニー)とローズ(ケリー・ライリー)、リチャード(トム・ハンクス)とマーガレット(ロビン・ライト)の二世代家族。現代に暮らす黒人夫婦に至るまで、普通の人たちの普通の生活。

特別なことは何ひとつ起こらないのに、彼らはその中で心の底から喜んだり、死ぬほど悩んだり、この世の終わりほど悲しんだり、必死で人生を生きている。なんだかすごく感動した。

この感覚が新鮮だったよね。

普通の家庭では、謎の殺人も起きないし、名探偵も現れない。ギャングも刑事も介入してこない。ミステリーサスペンスも基本的にありえない。結婚、出産、死別。「映画」を観に来ている我々には物足りない、そんな出来事が、普通の家庭では最高の幸せであり、最悪の不幸なんだよ。

HERE(ここ)の視界を通り過ぎていく「普通の家族」に、これまでにないほどのシンクロ度で感情移入ができた。他人の人生なのに懐かしかった。

たぶんね、これ、年寄り向けだと思うんだよ。歳を取れば取るほど味がする。もしかしたら若い人にとっては「ただ面白くない作品」の一言で流されちゃう系。いや、その通りだと思うよ。フィクション的には間違いなく「面白くない」。

でも「これが人生」なんだよ。「人生ってこんなもん」。それでも「素晴らしい」。

映画やテレビやYouTubeで、輝かしい人生や数奇な人生ばかり見ていると、「おれはなんてしょうもない人生なんだ」と思わされるときってあるよね。そんな「普通すぎる自分」を肯定してくれるような、良い映画だった。

ラストで何億年も(笑)固定されていた”時空カメラ”がついに動くシーンがあるんだが、その場面では、ジジババで埋まった劇場内はすすり泣きに包まれた。

みんな普通の人生、よく頑張ったよ。

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