ショッピングセンターで買い物を終え、駐車場を出ようとしたら駐車券がどこを探しても見つからない。
ポケットや財布のなかには見あたらず、助手席のかみさんに聞いても持っていないという。
そうこうしているうちに後ろに車が並び始め、おれは慌てふためく。
こういうプレッシャーに特に弱いかみさんも、隣で何やらわめいている。
半ばパニックになり、あたふたしていると、目の前のバイザーに挟まっている駐車券を発見する。
ホッと胸を撫で下ろしながら、おれは駐車券に手を伸ばした。その瞬間である。
バイザーに挟まっていた駐車券が、まるで蝶のようにおれの手をすり抜け、窓の外に飛んでいってしまった。
ビックリして駐車券の行方を追うが、すぐに見失ってしまった。
プッ、と満を持して後ろの車がクラクションを鳴らす。
ヤバい。
さらに慌てるおれ。
それを見ていた隣のかみさんは完全にパニック状態だ。
もちろん、それに輪をかけておれも正気でなくなっている。
この場合はどうしたらいいんだ。
おれは50年近く生きてきて、この場合の対処法を知らない。
やがてクラクションは、後ろの車から2台後ろ、3台後ろへと伝播し、怒りの大合唱へと変わっていく。
「プー!プー!ビッビー!プー!」
その絶望的なBGMの中、なぜかおれは焦ることも慌てることもやめ、ただ呆然としていた。
震える手でリクライニングを倒し、そっと目を閉じ、耳をふさいだ。
プレッシャーに耐えられなくなっていたおれは、信じられないことに、現実を遮断しようとしていたのだ。その時である。
コンコン。
外側から窓を叩く音がした。
現実に引き戻され、音のした方へ目を開くおれ。
窓の外には、駐車券を持っておれを見つめる蛭子能収が立っていた。
!?
蛭子能収のような人ではない。
蛭子能収である。
なぜ確信を持てたかと言うと、礼をいうより先に「蛭子さんですか?」と聞いたおれに、蛭子能収は表情も変えず、ハッキリと「蛭子です」と答えた。
おれは蛭子能収から駐車券を受け取った。
・・・という夢を、たった今見た。
これを読んでいる2~3人の中に夢診断ができる方がいたら、蛭子能収がおれのどんな深層心理を写し出しているのかを教えてほしい。