勝利投手 日本ハム 上沢 (7勝5敗0S)
敗戦投手 楽天 涌井 (6勝8敗0S)
セーブ 日本ハム 杉浦 (1勝2敗17S)
オリンピックブレイク後、後半戦が開始されてから7試合目、前半戦最終戦から数えると39日ぶりの勝利。「中田ロス」の渦中、ファンがどうしても欲しかった1勝を掴み取ってくれた立役者は、やっぱり「エース」上沢直之だった。
今日は序盤に打線がつながった。初回先頭西川遥輝が1塁エラーによって出塁、2番淺間大基がライト前ヒットでこれに続く。すると3番野村佑希のショートゴロが相手守備の野選を誘い、難なく先制点。2回にはR.ロドリゲスによるあわやホームランというフェンス直撃の三塁打から、今日の“女房役”清水優心が勝負強くタイムリーを放ち。2回の時点で2点のリードを勝ち取った。
ファイターズの先発上沢は、立ち上がりから決して調子がいいとは言えなかった。1回2回は結果的に無四球無安打とはいえ、決め球が甘く、7人の打者にそれぞれ粘られ2イニングで39球も投げさせられた。3回には球筋を見極められ2連続安打でピンチに陥り(なんとか無失点)、4回には先頭の島内宏明による二塁打からの茂木栄五郎のタイムリーで、ついに失点を許してしまう。
上沢はその後も安打、四球でランナーを背負いながらも、その都度ギアを上げて無失点で切り抜けていく。まさしくエースという魂の粘投で、結局7イニングを投げて5安打2四球1失点。調子が悪いなりに118球もの球数を慎重に使い、見事HQSでまとめることに成功した。
エースが7回まで試合を作ってくれれば、ファイターズには12球団屈指の勝ちパターンがいる。8回B.ロドリゲス、9回杉浦稔大が最小リードを守り切りゲームセット。
「絶対に勝つ」という執念を感じた谷内のフェンスダイヴ
もちろん上沢の好投、上沢とともにお立ち台に上がった清水のタイムリーなど、わかりやすい勝因はあるが、今日は9回表にチーム全体から感じた「最終回の執念」を覚えておきたい。
「執念」と言われてもピンとこないので、勝利への「執念」を特に感じた象徴的なシーンを挙げておく。
「守備のクローザー谷内亮太の執念ダイブ」だ。これは記録に残らないプレーなので、あえて文字として残しておきたいと思った。
9回裏、先頭打者の茂木は、守護神杉浦の投じた4球目のストレートを強振。バットはボールの下っ面を叩き、三塁ファールゾーンの方向へ高く打ち上がった。
打った瞬間、テレビで見ていた素人のおれは「あ、これはスタンドインか」と直感的に思った。しかし守備のクローザーとしてサードを守っていた谷内の目は違った。高く上がったボールから目を離さずに、猛然と追っていく。観ながらおれは思った。「いや無理だ、無理だよ」「無理すんなよ」。そんな心配などよそに谷内は決して足を止めない。あっという間にベンチ横のカメラマン席のフェンスに激突する。「危ない!」。谷内は腰高のフェンスに足を取られ、カメラマン席に転がり込んでしまう。「犬神家」スケキヨのごとく逆立ち状態の谷内。
ファール!
残念ながら捕球はできなかった。直後のスロー映像で見ると、ボールはむなしくも谷内のグラブをかすめ、カメラマン席の地面を跳ね返っていた。しかし場内からは大きな拍手が沸き起こった。感動した。
あの大飛球をあと数センチのところまで追い詰めた谷内も流石というほかないが、おれがここで感動したのは「絶対に捕ってやる」という谷内の気迫だ。
1アウトを取る。ただそれだけのために、迫りくるフェンスを全く恐れていなかったし、届くかどうかも分からないボールに向かって躊躇なく飛び込んだ。
結局はアウトを取ることはできなかったんだが、プロとしてのプライドと勝利への執念は伝わった。チームはいろいろあるが、現場の選手はプレーには手を抜かない。ぶっちぎりの最下位で、勝ったところでペナントにさして影響がなかろうが関係ない。目の前の勝ちにこだわる。
そんな当たり前のことを気づかせてくれた気がする。ファイターズはまだ捨てたもんじゃない。