勝利投手 オリックス 山﨑福 (8勝9敗0S)
敗戦投手 日本ハム 河野 (3勝5敗0S)
打っては3本のホームラン、投げては完封リレーと、バファローズの圧倒的なワンサイドゲーム。
1回裏、ファイターズ先発の河野竜生は、2番宗佑磨にヒットを許した直後、3番紅林弘太郎に5階席へ飛び込む特大ホームランを放たれ先制を許す。ファイターズも序盤から離されまいと、近藤健介、髙濱祐仁の連続ヒットで無死1塁3塁と反撃のチャンスを作るが、続く松本剛とR.ロドリゲスが内野ゴロ、三振と倒れ2アウト。清水優心の打席でディレイドスチールを狙った3塁ランナー近藤が刺され、無得点に終わる。今思えば、これが唯一のチャンスだった。
最大の危機を脱したバファローズ先発・山崎福也は、3~5回と1本ずつヒットを打たれつつも落ち着いて切り抜け、7回まで楽々と無失点で投げきった。
バファローズは5回に宗佑磨のソロホームランで1点追加、6回にはモヤのスリーランホームランと宗の犠牲フライで計4点追加。7回開始時点で7-0とほぼ勝利を手中に収めた。
8回にも鈴木健矢が攻められさらに2点追加されるが、もはや今のファイターズ相手にこの追加点は不要だった。
6回以降はすべて三者凡退と、無抵抗であっさりと完封。ファイターズは16度目の被完封(うち1度は完封”分け”)を喫し、連勝は2でストップ。
現在のファイターズは3点以上取られると、跳ね返すのが難しい。それでも9月以降は5割前後(実際は勝率.478)勝てているのは、ひとえに投手陣が3~4失点で踏ん張っているおかげだ。
3点以内で抑えればギリ勝てる、4点以上取られたら負け確定では寂しい。たまには9点取られても10点取って勝つような、「打撃陣のおかげで勝てた」と(打たれた)投手陣が感謝するような試合を観てみたい。
「今年は無理」か? いや、そんなことないぞ。残り20試合の中には「そんな試合が必ずある」と期待して、最終戦まで応援を全うしたい。
7点ビハインドのショート谷内亮太
6回裏、バファローズの攻撃。スリーランホームランを食らってもなお、さらに3連打を食らい、「どうやったらアウトが取れるのか」という呪いに吞み込まれつつあった場面で、“救いの神”のごとく飛び出したショート谷内亮太のファインプレー。
今日の試合は二度と思い出したくないような圧倒的なワンサイドゲームだが、このプレーだけは忘れたくない。
スリーランホームランを打たれ、この時点で「6点ビハインド」と”ほぼ試合が決まった”場面。救援のマウンドに上がった玉井大翔だったが、1本のクリーンヒットと2本の内野安打、計3連打で瞬く間に満塁(ノーアウト)。特に2本の内野安打は、アンラッキーではあるものの「プレーに集中できていればアウトにできたのでは?」と訝しまずにいられない”見えない守備のミス”に見えた。
そして続く宗佑磨には犠牲フライを決められ、さらに1点追加された。
もはや「もう6点差も7点差も変わらねえや……」というムード(に見えた)。正直にいうと、この時点にいたっては、おれもそんな気持ちで見ていた。
玉井は次の紅林との粘り合いのすえ死球を当て、再び1アウト満塁。完全に吞み込まれている玉井は、四番の杉本裕太郎へ不用意など真ん中のカットボールを投じてしまう。
杉本はその甘い球を狙いすましたようにセンター前へ。
そこにヤツがいた。
いや、そこに谷内がいた。ショート谷内は横っ飛び一番、センターへ抜けそうな打球を伸ばしたグラブでギリギリ捕球し、二塁へトス。二塁手の”アミーゴ”R.ロドリゲスがすかさず一塁へ投げゲッツー完成。
谷内亮太は7点ビハインドでも、いつもと変わらず集中して打球が来るのを待っていた。
「いつまで続くんだ」とうんざりしていた敵のビッグイニングを、たった一つのプレーが終わらせた。「よっしゃ!」。今日の試合では終始無言だったおれが、たぶん唯一声を出したシーンだった。「お前らシャキッとしろ」とチーム(とおれ)を鼓舞するかのようなファインプレーだった。
少なくとも最下位が濃厚な段階になった今も応援しているファンにとって、モチベーションはもはや勝ち負けだけじゃない。“結果のファン”はとっくの昔に離脱している。勝とうが負けようが、憧れの選手たちによる”プロのプレー”を見るために、ファンは球場に赴きテレビにかじりついている。
だから「勝ち負けにこだわるな」とは言わないが、「勝ち負けに吞まれるな」。
選手がこれを読んでいるとは思わないが、少なくともあと20試合は、勝敗やシチュエーションに関わらず、すべての場面・すべての瞬間瞬間において、そこでできる”最高のプレー”を見せてほしいと願うばかりだ。
「10月5日、7点ビハインドのショート谷内」のように。