フジテレビで平日の夕方4時から再放送されているドラマ『記憶』が、今日完結した。
これは今春CSで放送されていたものの再放送(地上波は初放送)とのことだが、こんなに良くできたドラマを観たのは久しぶりだ。
周囲の優しさに包まれながら、それを力に変えて奮闘する主人公(中井貴一)の姿に、終始泣かされた。
2週間前たまたまつけていたフジテレビでこのドラマの初回が放送されていたんだが、気づけば仕事の手を止めて引き込まれた。すっかりハマってしまった。
基本的に、平日は夕方にテレビなどつけることなどほとんどないおれがである。今ではその偶然に本当に感謝している。
12月3日からBSフジで放送されるらしいので、見逃した方はぜひ予約録画してでも見てほしい。決して損はさせない。
さて現在、同じフジテレビの地上波で月曜9時に放映されている『SUITS』も惰性で観ているが、同じ弁護士モノでもこうも違うかと歯がゆい気持ちになる。
“悩める月9″とはいえ地上波の放送。作品としてのクオリティは雲泥の差なのに、悲しいかな、視聴者の数は逆に天と地の差だろう。
フジテレビは本当はやればできる子。でも(月9という)大本番ではアホになる。
まあ、テーマもコンセプトも違うから、イチおっさんが文句を言ったところでただの野次である。
視聴率を上げることに人生を賭けている賢明な人々が、「地上波のドラマはアホな方がいい」と結論付けているんだから、それが真実だと思う。決して嫌味ではなく。
たしかに『記憶』のあの重いテーマでは、地上波で視聴率は取れないだろう。現実離れしたキラキラ世界で、美女イケメンが小ズルいブ男ブスたちを懲らしめるような単純な作品のほうがいい。
地上波ではストーリーのクオリティなどではなく、夢のような世界観が重要だ。誰でも仕事から帰ってきて、わざわざテレビをつけて重苦しい世界なんか観たくない。アホこそ至高。嫌味ではない。
そういう意味では、「視聴率は取れないだろう」という良作品を、意志あるメンバーが制作し、CSというステージを使ってでも“ちゃんと見せてくれた”ということに感謝すべきかもしれない。
さて『記憶』は、練り込まれた脚本もさることながら、個人的にはキャスティングがよかった。
豪腕事務所などとの政治的なしがらみがないから、ジャニーズや話題のイケメン俳優は出てこない(したがって無意味な恋模様も不要)。
地上波ドラマには必ずある“謎の若手女優枠”は存在していたが、まあ目をつむれる程度。
(ちなみに『SUITS』にも同じ若手女優が謎枠で登場している)
なんたって主演が中井貴一である。はなから若い層からの支持など捨てていると言っていい。主演のキャスティングだけで、「キラキラ世界が見たいなら他を当たってくれ」という強い意志を感じ取れる。
それを取り囲む実力派の俳優陣も、石丸謙二郎や松下由樹、モロ師岡など実に渋い。悪役の面々は見たことのない俳優ばかりだったが、本当に憎たらしくて素晴らしかった。優香も演技が上手くてビックリしたぞ。
今風な瞬発的な人気よりも、確かな実力でキャスティングした感じだ。
予算などの都合で、ギャラの高い派手な俳優は出せなかったんだろうが、作品単体としては逆にそれが奏功している。
ビバCS。
なかでも、主人公を支える若手弁護士役の泉澤祐希がよかった。
20代前半くらいだろうか。あまり見たことのない若手俳優だ。
イケメンでなくはないが、背も高くはなくあっさり塩顔。決して女子にキャーキャー言われるような、カッコこいいタイプではない。
しかし若いのに演技は抜群に上手い。若手であるがゆえの青臭さと真っ直ぐさを見事に表現していた。ひと目でファンになった。
いい俳優が出てきたな。
おれは応援するぞ。
・・・と最初は思っていたが、何話か観ているうちに記憶が蘇った。
そうだ。おれが彼のファンになるのはこれで2度目だった。
調べてみたら2006年だから、もう12年も昔になるのか。
当時小学生だった泉澤くんは、おれの”人生ベスト1ドラマ”『白夜行』に出演していた。
しかも主人公(山田孝之)の少年時代役だから、第一話は”主演”として、だ。
子役だった彼の演技(相手役の子役・福田麻由子の演技も凄まじかった)を見て、この子は将来どんな名優になるんだろうと思っていた。いい作品で”再会”できておれは嬉しいぞ。
『白夜行』も極度に重いテーマの本格派サスペンスドラマで、今でこそ「名作」の呼び声は高いが、当時は視聴率は伸び悩んだようだ。
それこそ今ならばCSでしか実現できなかったろう。
大好きなドラマで、ツタヤで借りてきては何度も見ているが、特に第一話だけは多分10回は観た。
1回観るごとに5回以上は泣くから、最低50回は泉澤くんに泣かされている。
初回2時間SPとなるこの回は、連続ドラマのただの1話目ではなく、単独2時間ドラマ(映画)としても通用するクオリティ。
まるで、2話目から最終話までは”ただの続編・ただの後日譚“に思えてしまうほど、単体作品として高いクオリティで成立している。
万が一このブログに辿り着き、面倒臭がらずにここまで読んでしまった方は、ぜひ『白夜行』を観てほしい。第一話だけでもいい。もしも観ていなかった人ならば、この一話だけできっとおれに感謝する。これも自信ある。
探してみたらHuluにあった(アマプラにはなかった)。
https://www.happyon.jp/into-the-white-night
今日は『記憶』で泣きついでに、『白夜行』第一話であと5回泣くかな。