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【備忘観戦録】〇栗山監督ホーム最終戦を「同期入団」の孝行息子たちが花道で飾った試合(10・26札幌ドーム)

更新日:

勝利投手 日本ハム 杉浦 (3勝3敗27S)
敗戦投手 西武 武隈 (0勝2敗0S)

栗山監督にとってのホーム最終戦。さらに今日勝たないと今シーズン最下位が決定してしまうので、二重の意味で絶対に負けられない試合

先発投手には2012年に監督就任した栗山監督の”同期”上沢直之が指名された。栗山体制のもとでドラフト6位からエースに上り詰めた「孝行息子」の一人だ。

そして四番にはもう一人の”孝行息子”、今や押しも押されぬ一流打者として成長した近藤健介。栗山監督をホームで見送るに相応しい布陣で試合に臨む。NHK BS1の中継では栗山監督元年の2012年にチームのキャプテンを務めた田中賢介も見守っていた。

エース上沢は序盤から絶好調。カットボールやツーシームなど小さくズレる球を中心に、要所で投げるチェンジアップと変化量の大きいカーブ。何より制球が抜群だった。回を重ねても集中を切らせることはなく、8回途中に降板するまで散発2安打。無四球無失点の完璧な投球でライオンズ打線を封じ込めた

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ただし打線の方も点が入らない。1~5回まで毎回ランナーを出しチャンスを作るも「あと1本が出ない」今季を象徴するような拙攻が続く。序盤からタイミングが合い「いつでも捕まえられそうな」ライオンズ與座海人を逃がし続け、結局無得点。

7回2アウトから今季で引退する谷口雄也が代打の打席に立ち、現役最終打席で見事なレフト前ヒットを放ったが、この大切なランナーもホームにかえすことができなかった。

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こうして両軍ともスコアボードに「0」を並べ続け、ついに迎えた最終回。ここでドラマが生まれた。

9回表を杉浦稔大がなんとか無失点で切り抜けた9回裏。先頭の近藤健介が四球で出塁する。続く髙濱祐仁の犠牲バントがフィルダースチョイスとなり一塁二塁。これをピンチバンター石川亮が無事に進塁させ一塁を空けると、強打者渡邉諒は申告敬遠。1アウト満塁

ここで代打に告げられたのが松本剛である。

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松本は上沢、近藤と同じ2012年入団組。栗山監督と同じ10年間をファイターズで歩んできた「最後の孝行息子」だ。

松本は、ライオンズ田村伊知郎が初球に投げた甘い球を打ち損じてファールにした後、続く4球を冷静に選び見事押し出し四球を勝ち取った

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先発の上沢が終盤まで好投し、9回裏に近藤からチャンスを作り、松本が決めた。2012年に就任した栗山監督のホーム最終戦を、2012年入団組の孝行息子たちが花道で飾った

「もっと早く援護できた」とか「上沢に勝ち星をつけられた」とか野暮なことは言いっこなしだ。ややスピリチュアルな言い方をすれば、上沢の好投も、打線の拙攻も、谷口のヒットも、すべて9回裏のサヨナラにつながっていた。こうなることは、最初から野球の神によって決められていたのだと思う。

今季は辛いシーズンだった。ファンでもそう思うんだから、監督にとってはその何百倍も何千倍も辛かったことだろう。それらをすべてチャラにしてくれたような粋なホーム最終戦

栗山監督の笑顔を見せてくれた野球の神様に感謝したい。

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盟友・宮西に直接ボールを渡したかった栗山監督

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谷口のラストヒット、サヨナラシーン、試合終了後のセレモニーなど印象的なシーンがてんこ盛りな試合だったが、試合中どうしても忘れたくない場面がある。

8回表、好投のエース上沢からレジェンド宮西への投手交代シーン

0-0。ここまで完璧な投球を続けていた上沢が2アウトまで取ったところで、栗山監督がマウンドに向かった。なんと完封ペースの上沢を交代するという。継投のボールが渡ったのは、今季50試合目の登板となる宮西尚生である。

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決してピンチでもないこの場面、2安打無四球無失点と好投を続けているにもかかわらず、味方も無得点で勝ち投手の権利も得ていない。そんな場面で、普通はここまで相手打線を圧倒しているエースを交代したりはしない。

しかし今日は「普通」じゃなかった。定石を崩してでも栗山監督にはやりたい”儀式”があったのだ。

栗山監督は審判に交代を告げて、自分でマウンドに上がった。マウンドで待つ「孝行息子」上沢とグータッチをかわし、一言二言のねぎらいの言葉をかける。まるで思い出話でもしているかのような穏やかな二人の表情。BGMとして流れる宮西が今日のために用意した登場曲「道化師のソネット」が清々しい。

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マウンドに駆けてきた宮西が上沢とグラブタッチして入れ替わる。栗山監督はアンパイアから受け取ったばかりの真っ白なボールを宮西に手渡し、ねぎらいの言葉をかける。何を言われたのか、少し照れくさそうに笑うレジェンド宮西。栗山監督の肩をポンと叩いて応対する。

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宮西はこれで14年連続50試合登板となる。「14年連続」ということは、栗山監督の就任から今までずっと「主力」として隣にいた唯一の選手である。今日活躍した「同期」上沢・近藤・松本が「孝行息子」なら、栗山監督にとって宮西は「盟友」だ。

栗山監督は、盟友の偉大な区切りをたくさんのファンが見守る北海道で迎えさせたかったし、そのボールをコーチ伝いではなく、自ら感謝の想いを込めて手渡したかったのだと思う。

もはや、これを受け取った宮西が8回3アウトめを見事ピッチャーゴロに打ち取ったのは必然。ベンチに戻る宮西の目に「北のジャイアン」に似つかわしくない光るものが見えてしまったが、これは見て見ないふりをしておこう。

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