遺書(ブログ)

斎藤佑樹はなぜクビにならないのか

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ファイターズの斎藤佑樹が今日、契約更改を行った。
6年連続減俸とのこと。成績は下降線なのでいたしかたないが、来季もマウンドの斎藤が見られることが決定したわけだから、とりあえずファンのおれとしては嬉しい限りだ。

それにしても、斎藤佑樹がヤフーニュースに載るとコメントがいつも酷い。

(昨年末)ゴールデンルーキー清宮に一言「頑張ってほしい」→お前が言うな。なぜお前はクビにならない
(今年夏)
吉田輝の甲子園投げすぎ問題「気持ちはわかる」→さすが甲子園のレジェンド。ところでなぜお前はクビにならない
(今年秋)
中継ぎで好投→1イニングなんて偶然抑えられる。なぜクビにならないか不思議
(10月)
吉田輝入団「一緒にやれるのが楽しみ」→クビにならないつもりか
(11月)
吉田輝と握手→恥ずかしくないのか。来年こそクビだな

どれだけクビにしたいんだ。

あからさまに斎藤佑樹批判を誘発する記事も、まんまとそれに乗せられて批判しちゃってる(させられちゃってる)人も、それをわざわざ見てうんざりするドMな自分に対してもうんざりする。

そして今日の「6年連続減俸」の記事に対するコメントも辛辣だ。

「首にならなかったと喜ぶべき」「他の選手に比べて恵まれすぎ」「期待するだけ無駄」「メンタルの強さは認める」……そしてお決まりの「なぜクビにならない」

言いたいことはわかる。
同じような成績で実際にクビになって涙を飲んでいる選手がゴマンといるというのに、斎藤佑樹はなんなんだ? 密約でもあったのか? 甲子園優勝投手はそんなにエラいんか??
気持ちはわかる。

プロ野球は実力の世界だ。
今年2軍ではそこそこの成績を残したとはいえ、プロは1軍での成績がすべてだ。3試合登板で0勝1敗、防御率7.27はクビになっても全然おかしくない成績である。斎藤自身も「クビにならなくてよかった」と思っているはずだ。
いちファンであるおれが言っても何の意味もないが、そこは心中お察しする。本当に申し訳ない。

ただ、ここを絶対に見くびってはいけないと思うんだが、

“戦力外”の選手に戦力外通告しない球団はない

ということ。
逆説的にいえば、「戦力だからクビにしない」。
これは信じるべきだ。目に見えにくい部分で斎藤佑樹はファイターズに必要とされている。ビジネス組織である球団の判断に、外野がとやかくいうことではない。

では1軍成績を残せない斎藤に、球団は何を期待して、どこを「戦力」だと考えているのか。

2軍のイニングイーター?
2軍である程度イニングを食ってくれる投手がいないと、シーズンを回していけない?
それは違うと思う。2軍の試合こそ、若手にチャンスを与えるべきだ。今季はたまたま斎藤がイニングを食ってしまったが、来季はそうはならないだろう。斎藤に期待されているのはそんなことじゃない。2軍のエースなどいらない。

グッズ売上で貢献?
これも違うと思う。いま斎藤佑樹グッズを買うファンは多くない。
もちろん、並み居る2軍選手の中では、まあ比較的売れるだろうが、実際球場で斎藤ユニを着ているファンはほとんど見ない。

将来の首脳?
頭のいい選手なのでこれはありえるが、意味もなく現役を伸ばし伸ばしにする理由にはならない。

じゃあなんなんだ。

ここからはおれの想像でしかないが(当たり前)、球団が斎藤に求めているのは「ドラマ」だと思っている。おれは大真面目である。

野球は実力の世界とはいえ、どこまでいってもエンターテイメントだ。ただし、競技を舞台にしたエンターテイメントだから、真っ先に勝ち負けに目がいきがちになる。しかし実はそれ以前に、ファンを「楽しませること」「感動させること」を第一義としている

極端な話、試合に負けたって、「楽しめて」「感動」さえあれば、それで成立する。勝ち負けは「楽しめること」のほんの一つの要素に過ぎないのだ。
それを素直に示してくれているのがプロレスの世界だが、それはまた別の話。

野球というエンターテイメントを楽しむには、試合単位、打席単位といった場面場面の感動もあれば、背景で大きく流れる「ドラマ」で盛り上げることも重要だ。

たとえば

「ゴールデンルーキー清宮幸太郎の成長物語」
「ミスターファイターズ中田翔の主将道」
「未完の大器 大田泰示の躍進」
「名将 栗山英樹の奪還」
「天才 近藤健介の4割への挑戦」

挙げればキリがない。
こうしたバックストーリーが多い球団が、あらゆる意味で”強い”(しつこいけど勝ち負けじゃない)。

ファイターズはこうした「ドラマ」を大切にする球団だ。
そして、そのファイターズがずっと大切にしている「ドラマ」の一つが

「どん底から這い上がる栄光のヒーロー斎藤佑樹」

なんだと思う。

かつて甲子園で栄光を掴み取ったヒーローが、プロ入りしてどん底を味わい、ボロボロになりながら、泥まみれになって這い上がる。

ここ数年、斎藤佑樹が受けているバッシングの数々も、このドラマにとっては最高のスパイスだ。

こんなドラマを現実で見られたらと思うと、想像するだけでも身震いする。これぞ最高のエンターテイメントである。

ファイターズはこのドラマを盛り上げたい。
そして当然主人公である斎藤佑樹は必要だし、(ここが重要なんだが)球団は斎藤に「這い上がる力」があると思っている。エンターテイメントの大きな要素としてはもちろん、選手としても十分に戦力になりうると踏んでいるのだ

斎藤佑樹はおれにとって特別な選手だ。
少し心が弱っていた頃、2006年の甲子園を見て勇気づけられた。
大した恩返しはできないが、どの球団に行こうが、おれはこの選手を応援していこうと誓った。
そして4年後、ドラフト1位でファイターズに来た。奇跡だと思った。
ファイターズの選手になって、さらに誓いの意志は固まった。
「斎藤、何があってもおれはお前を応援するからな」。

そんなおれでも、もはや本格派投手としての復活は望んでいない。
おれはただ、どんなに打たれても、どんなにヒドいバッシングを受けても、ボロボロになっても、意志あるうちは現役から逃げずに投手として生きていく、カッコ悪くてカッコいい斎藤を最後まで見届けたい。

おれの恩返しはまだ終わっていない。

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