派手映画好きなので、映画のジャンルに「ヒューマンドラマ」と書かれている映画は個人的に敬遠しがちなんだが、珍しい競馬ものであることと、98分という手軽さでHuluの再生ボタンを押した。
観てよかった。
オーストラリアの大自然、馬、牧場。エモいシーン盛りだくさんの牧歌的な地味映画を想像していたが、とんでもない。もちろん美しいシーンは満載なんだが、その実は競馬一家に生まれた女主人公が一流ジョッキーを目指すスポ根映画だった。
まわりからは「騎手なんて夢は捨てなさい」「女は一流になれない」と言われ続けても、ひたむきに夢を追い求める主人公。男性社会ならではの苦渋を味わいながら、折れるどころかむしろ「負けるもんか」と闘志をむき出しに突き進む。
途中、理不尽な出場停止や、騎手生命にかかわるような大きな怪我に見舞われても、絶対に諦めることはない。主人公を演じたテリーサ・パーマーの負けん気の強そうな、眉毛がピッと上がった表情がぴったりハマっていた。
レースシーンがリアルなのがよかった。テレビや客席には届かない騎手同士の怒号、駆け引き。本当に馬群の中で観ているような気持ちになって興奮した。
ラストのメルボルンカップのシーンでは、最後の直線で思わず「差せ! 差せ!」と声が出てしまった。主人公が騎乗するプリンスオブペンザンス(名前を覚えてしまった)が一着でゴールを駆け抜けたときは感極まって泣いた。
こんなのトウカイテイオーが奇跡の復活を遂げた1993年有馬記念以来だ。