外野フライが全部ホームランに見える
現地あるあるのひとつに「外野フライが全部ホームランに見える」というのがあるんだが、1戦目2戦目を現地観戦してそれを改めて実感した。
1戦目に戻って、初回近藤健介の1打席目は先制ホームランだと確信して両腕を突き上げてしまったし(レフトフライ)、2回バファローズ頓宮の当たりも「ああ、いかれたぁ!」と頭を抱えたらセンターフライだった。
タチの悪いことに、これが続くと逆にホームランが全部外野フライに見えるようになってくる。
「ゲゲ!いい当たり! でもこれはいかないやつに決まってる!」
と高をくくったら、届いた。
それが1戦目、かの憎っくき紅林弘太朗の同点ツーランだった。
今日の試合も、初回吉田正尚の当たりは「当たりの強い外野フライ」に見えた。しかし、これも余裕のスタンドイン。2日目にして、「打った瞬間に判断する」という愚かな行為をやめた。
しかし、1戦目2戦目で唯一「打った瞬間にホームランと判断できてしまった」打球がある。
3回裏、今川優馬のバックスクリーン同点弾だ。
打った瞬間
3回先頭に、梅林優貴がめでたいプロ入り初ヒットで出塁。それを小技師・谷内亮太が犠打で送ろうとするが、失敗してランナーは一塁止まり。ここで打席が回ってきた今川には、思い切り長打を期待される局面だった。
初球だった。きっとヤマを張っていたんだろう。宮城大弥がなんとなしに投げ込んだストレートを見逃さなかった。フルスイングで思いっきり撃ち抜いた。
内野席(ほぼ真横)から見て打球は約45度の超高角度、かつとんでもないスピードでセンター方向へぶっ飛んでいった。
「打った瞬間に判断する」をやめた後だが、打った瞬間に判断できてしまった。「これは絶対に入るやつ」。
前日の紅林弾のお返しと言わんばかりの、見事な同点ツーランホームラン。周囲は沸きに沸いた。背番号61のユニホームを着た女性なんかは泣き声を上げていた。
それを見たおれもついグッときて、ポケットから自慢の「ハンカチ王子ハンドタオル」を取り出した。
一番悔しい男
ファイターズファンにとって、今日は間違いなく「今川優馬デー」だった。殊勲の同点弾を放った今川の前に、もう一度山場が訪れた。
2点を追う9回裏、バファローズ守護神・平野佳寿の前に、簡単に2アウトを喫した後、代打の清宮幸太郎が起死回生のツーベースヒットを放った。
沈みかけていた球場内に再び火が点く。鳴りやまない拍手。ファイターズベンチからも一際響く大きな声援(万波?)が聞こえてきた。興奮して中腰状態のおれ。
ここで打席に回ってきたのが、今日の主役・今川優馬だ。
今川はここまですでに猛打賞。しかも「単打→本塁打→二塁打」とサイクル安打に王手がかかっていた。残るは三塁打なんだが、今川の頭には一欠片もそんなものはなかっただろう。狙うは一発。再び試合を振り出しに戻す同点弾だ。
また初球だった。平野の高めからど真ん中に落ちてくる変化球を振り抜いた。
打った瞬間に「いった」と思った。打球は角度をつけて打ちあがり、ライトスタンドへ一直線にぶっ飛んでいった(ように見えた)。興奮してたぶん無意識に立ち上がってた。後ろの人ごめん。
「届け!届け!」と(心の中で)叫ぶおれ。
打球はライトスタンド……の手前で待ち受けるライト来田涼斗のグラブに収まった。ゲームセット。
場内から大きく漏れるため息。悔しかったが、みんな悔しがっていることに、ホームゲームならではの癒しがあった。
そして球場内で、たぶん一番悔しい男。
打球が落ちることを信じて二塁まで走っていた今川。トボトボと肩を落としながら、悔しそうに戻ってくるシーンは印象的だった(※TOP画像)。
再びおれは「ハンカチ王子ハンドタオル」を取り出した。