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リアリティ

投稿日:

ジャンル 社会派 / スリラー / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 2023
公開年月日 2023/11/18
上映時間 82分
鑑賞 アマゾンプライムビデオ

ザ・不幸顔女優の本領発揮

事前にあらすじや予告編で「FBI尋問録音を一言一句<完全再現>」というキャッチコピーを見たときは、なるほどアイディアは面白いけどエンタメ寄りじゃないんだろうな、と感じた。

ごめんなさい、面白かった。

主人公リアリティ・ウィナーがFBI捜査官に自宅で尋問された90分足らずの様子を、俳優が再現しているだけ。たしかにそれだけなんだが、「テレビ番組の再現VTRみたいなもんか?」と聞かれれれば、はっきり違う。

これは、キャッチコピーにもある通り「完全再現」。残存する音声データを元にしているので、俳優たちはそれを本当に”そのまま”演じている。だから、セリフがどもったり噛んだり、咳込んだり、言葉がバッティングしたりする。話す内容も、話題が逸れたり、意味なく笑ったり、突然別の人物が話に割って入ったり。一般の映画では全部NG。そこがまさしく「リアリティ」。

「そんなの聞きづらいじゃないか」「ちゃんと作られたセリフの方が内容が入ってきやすいんじゃないか」。それはそう。音声データに本当に機密な箇所があるのか、ところどころで伏字(ここの処理がオシャレ)があったりもするので、会話の内容は入ってきづらい。ただ、内容はシンプルなので、着いていけないことはなかった。

それに、この作品が表現したいのは、会話内容ではなく「究極の緊迫感」なんだと思う。

この「緊迫感」が、計算されて作られたホラーやサスペンスでは味わったことのない類だった。徹底的にリアルを追及しているので、本当に自分が尋問されている感じ、徐々にFBIに追い詰められている感覚になる。

「だったら音声データをそのまま聞く方が、よりリアルで緊迫感があるのでは?」

それは違う。残存した音声データで会話は聴けても、動きや表情は見えない。そこを埋めた俳優の演技の力がかなり大きかった。特に主演のシドニー・スウィーニー。彼女はすごいね。

不安げな表情をデフォルトに、訝しげな表情、ホッとした顔、堂々とした態度、愛想笑い、ペットに癒される表情、震える目鼻口、涙目、怯えて座り込む演技まで。想像より威圧的ではないFBI捜査官のリアルな演技も相まって、本当にシドニー自身が罪を犯しているんじゃないかと勘違いしてしまうほど。

まさにザ・不幸顔女優(今おれが名付けた)の本領発揮。この役は彼女以外は考えられないね。

ただの「実話」じゃない。ただの「再現」じゃない。実際の音声データに基づいたリアルな会話と、優秀な俳優のリアルな演技で生み出された「緊迫感」は十分にエンタメ。いやあ、変な汗をかいた。楽しかった。

さて、次の予定は「恋するプリテンダー」。
「ノクターン」「リアリティ」と続けてシドニーの不幸顔しか観ていないので、ハッピーなラブコメヒロインの顔は今のところまったく想像できない。楽しみ。

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