ジャンル | サスペンス・ミステリー / スリラー / ドラマ |
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製作国 | アメリカ=カナダ |
製作年 | 2024 |
公開年月日 | 2025/4/25 |
上映時間 | 111分 |
鑑賞 | TOHOシネマズ川崎 |
A24作品の中では普通(いい意味で)
割と正確に五分五分なA24ガチャだけど、多分死ぬまでやめられない! ずいぶん前から予告編を見ていて、絶対に配信スルーだろうなと思っていた「HERETIC(原題)」が、「異端者の家」という邦題に変わって満を持しての日本公開。期待値を爆上げして観に行った。
うーん、うまく言えないけど、いい意味で「普通」だった。
これ、いい意味だからね。割と普通な地味系ホラーで、普通に面白かった。と同時に、いつもみたいな「俺たちゃA24だぜ!!」的な”尖り”もほとんど感じられなかった。もちろん、いい意味で。
身構えていただけに拍子抜けはしたけど、本質的に嫌いじゃない。鑑賞後感を素直にいえば「好き」。普通に。
本編は大きく2つのパートに分かれると思う。前半の宗教対談(実質ほぼ「演説」)パートと、後半の謎解き脱出パート。その「前半」がさ、個人的には辛かったなあ。長かった。時計は見てないけど、たぶん全尺の半分くらいは使ってたよね? そこまでじゃない?
前半はざっくり言うと、モルモン教の勧誘にきた若い2人のシスターに、家主のジジイ(ヒュー・グラント)が独自の宗教論をぶちまけるんだけど、ここが見ていてイタかった。
こんな風に見た人は少ないかもしれないけど、個人的には、どこの職場でもたまに見かけるあれに見えてしまった。有望な新人社員の女の子に、延々と仕事術や仕事論を語り続ける老害部長。
「コイツ何を言ってるんだ」と感じたところで、新人の女の子は愛想笑いを浮かべながら聞き流すしかできない。老害部長も実はそれがわかっていて、持論語りはとめどなくエスカレートする。多少話を盛っても、いい加減な嘘を織り交ぜても大丈夫。だって彼女らは言い返せないから。万が一、ちょっと反論でもしようものなら簡単に叩き潰せる。だって老害部長は、その道の経験と知識「だけ」は圧倒的にあるから。「教えてあげてる」が気持ちいい。「教育」は二の次で、「気持ちいい」が真の目的。
いいかヒュー! お前のキモさはわかってるんだからな! 全部マルっとお見通しなんだよ!
……なぜならこれ、数年前のおれ自身だから。ごめんなさい。
「宗教とは」「神とは」「一夫多妻制の是非」「モノポリー」「レディオヘッド」「ジャージャービンクス」etc…あれだけ尺を取ってヒュー・グラントに嬉々として語らせたんだから、映画の制作陣はきっと「こんな考えを世に広めたい」という目論見もあったんだろう。でも、少なくとも自分に対しては失敗だったと思う。おれは、ただただ自分の黒歴史を垣間見せられて胸を痛めていただけだった。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……。
さて。
ガラッと変わって後半は面白かったね。それまでの退屈さ(+懺悔)が上書きされるほどに。グッとエンタメになった。
ハラハラドキドキあり、キショグロシーンあり、意外な展開あり、謎解きあり、種明かしあり、ホロリあり、スカッとあり、ヒューの顔芸あり。建物フェチとしては、歴史的な家屋の内観や数々のギミックも楽しかった(模型も)。
俳優陣もよかったね。ヒューと2人のシスターのみと「登場人物はほぼ3人」ってのが視点を集中できていい。主演(?)のヒューの怪演については語るまでもないが(ひとこと「キモイ」(褒め言葉))、2人のシスターを演じたソフィー・サッチャー(公式表記)とクロエ・イーストがどちらも「初めまして」だけど、ほんとに良かったなあ。
しっかり者のシスター・バーンズ(ソフィー)と、少し頼りないシスター・パクストン(クロエ)。きっちりキャラ分けされた二種二様な”不安顔”が逸品だった。2人とも今後もホラーやサスペンスのジャンルで見続けたいタイプ。
どちらも十分に主役を張れるオーラがあるし(ソフィーはアニャ・テイラー=ジョイばりの目ヂカラが凄い)、ニュースターの予感をビンビン感じた。調べると「まだこれから」って感じの若手女優なので楽しみ。引き続き追っかけよう。
と、そんなわけで、A24としては拍子抜けするほど普通だけど、見どころが多い作品ではあった。A24作品は人におすすめできないことが多いけど、これはおすすめしても恨まれはしないと思う。普通に面白かった。いい意味で。
あと、パンフレットの特典も良かった。キラキラの「A24」ロゴ入りショッパー(袋)。いま部屋の壁に貼った。テンション上がる。



