| ジャンル | ドラマ |
|---|---|
| 製作国 | アイルランド=イギリス=フランス=ドイツ=アメリカ |
| 製作年 | 2024 |
| 公開年月日 | 2025/9/5 |
| 上映時間 | 100分 |
| 鑑賞 | キネカ大森 |
「キショ楽しい」「ザワ楽しい」「キモ楽しい」
劇場が明るくなって場内を見渡すと3列ほど後ろに若い女性一人しかいなかった。128席の中型スクリーンで、客入りはおれ含めてたった2人。遠い昔「ソウ5」で1人(レイトショー)を経験して以来の自分史上2位だ。忘れないように書いておこう。
いや、面白かったよ。客入りは悪いみたいだけど。
これはなかなかの拾い物。
かの変態天才監督ヨルゴス・ランティモスの妻、アリアン・ラベド監督による、ヨルゴスもニンマリの”胸糞オチ映画”。冒頭から1時間半たっぷり「おれは何を見せられているんだ」からのラスト15分の急展開はキショ楽しかった。
だからといって、作品の大半を占める「おれ何(略)」展開も退屈だったわけではなく(地味だったけどね)、なかなかいいんだよ。
不穏な空気感というか、漂う気持ち悪さというか、役者たちの純粋と悪意がミックスされたような表情や、ありそうであり得ない行動、やけに強調された生活音やカラフルな車いすやワキ毛に至るまで、「何だかわからないけど異常」な不快さがザワ楽しい。ちょっとでもバランスを崩せば、絶対に何かが起きちゃう感じ。大好物。
大筋はタイトル通り「セプテンバー(九月)」と「ジュライ(七月)」という名の高校生姉妹の物語。おそらく知的障害を持ち(?)、クラスメイトから陰湿なイジメを受けている妹ジュライを、とんでもなく勝ち気で強い姉セプテンバーが常に見守っている。
ジュライがいじめられると、セプテンバーがヒーローのように現れて、やり過ぎなくらいに相手をぶちのめす。助けた後は「おバカなジュライ」と優しく囁きながら妹の額にキスをする。
「セプテンバーは乱暴だけど愛情深い子なんだよな……」
――なんて、最初は思っていたけど、どうやらそんな単純でもないらしいということが徐々に見えてくる。
セプテンバーは言う。
「誘拐されたらあなたが代わりに誘拐されてくれる?」
「どちらかが死ななきゃならない時は、あなたが死んでくれる?」
「私が死んだら、あなたも死んでくれる?」
うーわ、キモい! キモ楽しい!
なるほどね。セプテンバーはジュライのことを確かにめちゃくちゃ愛しているんだよ。本当にジュライのことを心配しているし、ジュライが馬鹿にされればブチキレる。でも、よく見ると、これって肉親というよりはペットに対する愛情に近い。愛はあるけど絶対服従。ジュライもそれを受け入れているっぽい。
こんな異常で極端な関係性なのに、サイコホラーっぽくならずに無理なくリアルに表現できていたのがすごい。見たことないのに、本当にこんな姉妹いそう。
そしてじっくり1時間半「おれ何(略)=設定説明」をした後に、怒涛の急展開だ。あれに引っかからなかった人もいると思うけど、おれはまんまと意表を突かれた。
終始不穏で不快で気色悪いけど、ちょうど見やすい100分間。最近は生活に「キショ楽しい」「ザワ楽しい」「キモ楽しい」が欠けていた気がするので、個人的にシンデレラフィットな作品だった。
ただ、次は思いっきりハッピーな映画を観たいね。
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