勝利投手 日本ハム 上沢 (8勝5敗0S)
敗戦投手 オリックス 山﨑福 (5勝8敗0S)
セーブ 日本ハム B.ロドリゲス (0勝2敗2S)
2日前の伊藤大海の完封劇の興奮が覚めやらないなか、「真のエースは俺だ！」とばかりにファイターズ先発上沢直之が快投。7回1失点10奪三振という見事な力投で今季8勝目を記録した。
今日はファイターズ打線もよく打ち12安打。それにしては「3得点」は少ない印象が残るが、要所要所で効果的な点を重ねていく展開で、首位バファローズに一度もリードは許さなかった。2日前の試合と違って得点効率が良かったとはとても言えないものの、好調な打撃陣は見ていて気持ちいい。
特筆すべきは野村佑希だった。
野村は初回、1番西川遥輝が先頭で出塁したものの2番3番が凡退し「ここで1本打って望みをつなげてほしい」という場面で、見事右方向へ技ありのテキサスヒットを放った（次の打者が凡退して得点には至らなかった）。
4回にも、先頭がいきなり2塁打を放ったものの後が続かず釘付けで2アウトという場面で、今度はレフト方向へ勝ち越しのタイムリーツーベースを決めた。
前半戦は「打つけどチャンスに弱い」と言われてきた野村が、後半戦はチャンスに滅法強い。若い選手の驚くほどの成長速度におじさんはつい目を細めてしまう。
お立ち台には、4回に先制タイムリーを放った佐藤龍世と、7回にダメ押しタイムリー二塁打を放った木村文紀が上がった。ライオンズからトレードで移籍してきた2人が、ファイターズで成果を積み上げていく姿を見るのは本当に嬉しい。ヒーローインタビューで喜びを爆発させる2人を見ていると、「突然の移籍からのこの2週間は、いろいろ心の動きがあったんだろう」と想像してしまい、涙が出そうになった。この点においても忘れられない試合になりそうだ。
ファイターズは引き分けを挟んで3連勝。これで5位との勝差は1.5と、ライオンズの背中ははっきり見えてきた。目指すはもちろんAクラスだが、まずは「最下位脱出」を目前の目標として勝ち進んでもらいたい。
9回ライト木村→セカンド石井→サード谷内のパーフェクト中継
9回表、クローザーとしてマウンドに上がったB.ロドリゲスの投球は決して良くはなかった。
2点リードで絶対に逃げ切るぞ、という場面で、先頭の安達了一にいきなり内野安打で出塁を許してしまう。幸運なことに、続くジョーンズを併殺に取り、事なきを得たが、その打ち取った球も真ん中高めの甘いコースで、投げた瞬間はヒヤッとした。ともあれ2アウトランナーなし。
結果とは裏腹にギクシャクした投球は、次の来田涼斗でも修正できていなかった。初球カーブがすっぽ抜けボール、2球目はチェンジアップが絶妙なコースに決まり空振りを取るが、3球目に続けて投げたチェンジアップが真ん中に行ってしまった。
ライト方向へ完璧に打ち返され、右中間を破る長打コース。テレビ画面には慌ててクッションボール処理に走るライト木村文紀の背中が映った。
打った来田は、それを横目に俊足を飛ばして一塁、二塁と駆け抜けていく。「ああ、これは三塁打になっちゃったな」と諦めた瞬間、なんとボールがサード谷内亮太のグラブに返ってきた。
ビックリした。中継だけ観ていたら、ボールがワープしたかと思った。
直後に流されたリプレイを確認すると、外野フェンスに跳ね返った打球をライト木村が右手でベアハンドキャッチすると、
すかさず矢のような返球を、セカンド石井一成のグラブへ打ち抜いていた。石井はそのボールを、まったく無駄のない動きでサード谷内へ素早く送球。
アンツーカー手前でワンバウンドした球を谷内は難なくキャッチし、流れるような動作でちょうどサードベースへ飛び込んできた来田の右脚にタッチした。
アウト！ ゲームセット！
痺れた。つい大声が出た。
来田の暴走ではないと思う。来田は右中間を真っ二つに破る打球を確認しながら走った。打球の速度、外野手の動きなどを計算に入れながら、3塁まで行ける可能性は高いと思った。だから躊躇なく2塁を蹴った。中継プレーにミスがあるかもしれないと考えれば、むしろ良い判断だったと思う。
その判断を、木村・石井・谷内による完璧すぎる中継プレーが上回っただけだ。あの土壇場で、動きにひとつの無駄も、ミスもなく、“まさしくプロ”というプレーを見せてくれた。
きっと絶対にまた見たくなるナイスプレーだ。忘れたくないので、ここに残しておく。