昨日、ファイターズがホークスに敗れた。
これで、交流戦から数えて5連敗になる。
連敗、3連敗くらいまでは「長いシーズンならよくあることだろ」の一言で心の整理はつけられるが、それが「5」の大台に乗ると、ファンとしては少し堪える。
中盤までは個人的には最高な展開だった。
実は圧勝よりも大好物な、息もつかせぬシーソーゲームだ。
先制したホークスに渡邉諒の一発で逆転、その直後追いつかれたものの、その裏の攻撃で1点勝ち越し、再び優位に立った。
「あとは自慢のリリーフ陣でこの1点を守り抜くだけだ!(できれば追加点)」
ドキドキと同時にワクワクする。手に汗握る。プロ野球はエンターテイメントとしても至高だ。
うるさいクライアントからのLINEがガンガン入ってきていたが、開く暇などあろうはずがない。うるせえ未読スルーだ。これは書く必要なかった。
ともかく、試合は思い描いたシナリオの通りだった。
栗山監督はこの1点を守りきろうと、信頼できるリリーフのカードを強い順から惜しみなく切っていった。そしてその信頼に応え続けるリリーフ陣。それを手助けすべく野手はビッグプレーを連発する。
「絶対に守りきってやる!」。
そんな選手たちの気迫がテレビ画面から伝わってきて、おれの鳥肌は立ちっぱなしだった。
そして9回のマウンドはこの男。
石川直也である。
展開としては100点満点。もはや負ける要素などどこにもない。
苦しい展開から伏兵が活躍して手にしたリードをチーム一丸となって守り、最後はナオヤが締める。最高だ。
どう考えても勝つシナリオだ。
おれは冷蔵庫からビールを持ってきて、祝杯の準備を始めていた。仕事?そんなもん知るか。
しかしその直後、悪夢に叩き落とされることになる。
簡単にツーアウトを取ったあと、ホークスのベテラン内川聖一に巧妙な軽打を浴び、その直後、上林誠知に嘘みたいな逆転ランニングホームラン(?)を決められてしまったのだ。
9回裏に打線が反撃を試みるも、ホークスの新クローザー甲斐野央の前にあえなく無得点。試合終了。
落ち込んだなあ。ああ正直に言う。落ち込んだ。
祝杯のために用意したビールを一気に飲み干してフテ寝した。仕事?そんなもん知(略)。
数十分後に目覚めてTwitterのTLを見ると、やはりファンの声は手厳しい。矛先は当然、逆転ホームランを浴びた石川直也だ。
「今年これで何度目だ?石川直也はクローザーに向いてないんじゃないか」
大多数は特に犯人探しをせずに、ただ残念がっている心優しいファンばかりだったが、石川直也に特別な想いを持つおれとしては目を背けたくなるようなコメントも散見された。
無理もない。
9回ツーアウトまで誰もがファイターズの勝ちを確信していた。誰もがおれと同じく祝杯の缶ビールのプルトップに指をかけていた。その喜びが、石川直也の投げたたった1球により、幻のように目前から消えた。
悔しい。っていうか5連敗だ。
こんな精神状態で仕事なんかできるか。これは言い訳だ。
中盤までのワクワク展開などとっくに上書きされて、苦々しい後味だけが胸に漂っていた。中盤まではあんなに楽しんでいたくせに、現金なものだ。
(石川がリリーフ失敗したのは)「今年これで何度目」か?
答えてやろう。記憶があるだけで、少なくとも5回だ。もう少し多いかもしれない。
26試合登板しているとはいえ、ちょっと多い。
すっかり「石川直也2019モデル」は完成したものと思っていたが、石川のポテンシャルから考えると、この成績では到底完成とは言えない。言いたくない。もしかしたら、クローザーにはまだちょっと早かったんだろうか。チーム状況もあることなので、詳しいことはわからない。
ただね、一点だけ。
一 点だけ言わせてもらいたい。
石川直也が「クローザーに向いていない」ということは絶対にない。
とおれは思う。
異論がある人も、ここから先はイチ直也ファンのただの”えこ贔屓”論だと思って、どうか広い心で聞いてほしい。
191cm94kgの恵まれた身体。高い角度から突き刺さる剛球。手元で消えるスプリット。これらを駆使した今シーズンの奪三振率は10.80。
今のファイターズにこれほどクローザーに向いている投手はいない。
たしかに弱点といえば、ご存知のとおり優しすぎるメンタルだ。点差が近い場面でマウンドに上がり、かつランナーを背負うと、コントロールがわかりやすく乱れる。四球を連発したり、球が甘いところに行ってしまって痛打されることがある。それが「クローザーとしては致命的だ」という向きもあるが、おれはそうは思わない。メンタルという側面のみでの話なら「致命的」なんてことは決してない。
球は本物なんだから、平常心で投げられれば問題ないじゃないか。実際、自信たっぷりでマウンドに上った時の石川は無敵だ。敵チームの強打者たちを、その豪腕でバッタバッタとなぎ倒す姿は爽快の一言だ。この“無敵の直也”の登場率が増えればいい。恵まれた身体は持って生まれたものだが、メンタルは試合を重ねれば鍛えられる。
何度失敗しようが、「采配ミスだ」とファンに叩かれようが、きっとこれが栗山監督が石川直也にこだわる理由だ。
ファイターズの10年クローザーを作ること。
監督の仕事は、広い視野でいえば「今日の試合に勝つこと」なんかじゃなく「強いチームを作ること」だ。「長期間戦えるチームにすること」だ。
そのためには、これからの10年を支える「守護神・石川直也」は必要不可欠な絶対的ピースであり、北広島への移転を控えた新生ファイターズの希望でもある。ある程度の犠牲を払ってでも、これは是が非でも手に入れなければならない。
申し訳ないが、それは外国人でも秋吉亮でもない。
“北の大魔神”になれるのは石川直也しかいない。
ここまできたら、 逆になってもらわなければ困る。
昨日の逆転ホームランは悔しかった。
この前の中日戦での同点タイムリーも悔しかった。
でもその度に、おれにはハッキリとドラクエのレベルアップ音が聞こえている。結果とは裏腹ではあるが、石川直也は、栗山監督のおかげで唯一足りないメンタルの強さをぐんぐん伸ばしてもらっている。1試合ごと、1球ごとにはぐれメタルを倒し続けている。
「二軍に落とせ」だ?そんなもったいないことできるか。大魔神の完成がその分遅れてしまうぞ。
近い将来、レベルアップ音とともに、こんなダイアログが見える時が来るかもしれない。
「なおやは、おにメンタルをてにいれた。レジェンドにクラスチェンジした」
栗山監督が石川直也にこだわり続ける限り、おれも、石川直也が鬼メンタルを手に入れ正真正銘の守護神になるその日まで、拳を上げて応援し続ける。石川直也は、必ず期待に応えて誰もが恐れる大魔神になってくれる。
そしてファイターズのレジェンドとなって、十何年後かに引退セレモニーが催された時、チラッとでもいいから昨日の映像を流してほしいものだ。
その時は、「あの試合、リアルタイムで見てたなあ」なんて、ボロボロ涙を流しながら”北の大魔神”の足跡を讃えられたら最高だ。
いくらなんでも気が早すぎるか。