ジャンル | SF / ラブロマンス |
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製作国 | 日本 |
製作年 | 1983 |
公開年月日 | 1983/7/16 |
上映時間 | 104分 |
鑑賞 | YouTube「角川シネマコレクション」 |
ヤング尾美としのりの絶妙なポジショニング
YouTubeの角川公式CHで全編限定公開しているのを見かけて、最後まで観てしまった。完全に世代ど真ん中なので、これまでの人生で何度観たかわからない。ただ、今回は相当丁寧に鑑賞した。
まず、結末を知っている状態からの最初のスキー教室シーンが、なんというか、エモい(言葉が見つからなかった)。
星明りしかないモノクロの雪山で、和子が誰かにぶつかる。
たっぷり間を置いた後で、和子「……深町、くん?」。
後から来た吾郎も「誰? ……なんだ、深町か」。
これ! この(……)の間がたまらん。
実はこれが3人が初めて出会ったシーンだったことを、おれは最初から知っている。これからこの3人に訪れるドラマを思い浮かべながら、早くも目頭が熱くなった。
今回は割と「吾郎ちゃん目線」で物語を追った。
現在もバイプレーヤーとして活躍するヤング尾美としのりがいい演技するんだよなあ。
物語は完全に主役2人を中心に焦点を当てて描かれているにもかかわらず、「半分モブ」の吾郎の人物造形にも、監督(および尾美)はいっさい手を抜いていなかった。……というのが今はわかる。
特にあのシーンはよかったね。
実験室で倒れた和子の上半身を起こそうとするんだけど、どう持ったらいいのかと照れちゃうシーン。それと終盤、落ちてくる屋根瓦から和子に救われるシーン。
自分を救おうと必死な和子にドキドキする吾郎の表情を、カメラがすごく丁寧に捉えていたのが印象的だった。
メタ的にいうと、三角関係的な話にはしたくないけど「吾郎の密かな恋心」は物語には重要な要素だからいい塩梅で印象付けたい。その絶妙な立ち位置を、濃くも薄くもない存在感で上手く表現していたなと感じた。
こんな風に吾郎に感情移入していると、和子から吾郎との大切な想い出を横取りした深町に少しムカついてくる(笑)……というのも新鮮だった。
なに得意げに「桃栗八年」の歌、和子と一緒に歌ってくれちゃってるんだよ。
今回改めて鑑賞して、
神秘的な実験室のシーン。
いつも瓦越しに映る尾道の街並み。
地震のホラー演出。
淡いビジュアルのストップモーション。
全編にわたって静かに流れるピアノの旋律。
どれをとっても、他ではあまり見ない独特な雰囲気のあるシーンばかりで心に残る。……というか「こべりつく」。発達し切った映画史の中でも、いまだに「名作」を呼ばれる理由を再認識した。
この一連の感覚が「おじさんだから」「古い物への安心感」「ただの想い出補正」なのかはわからない。
この作品を初めて観る若い人の感想も聞いてみたい。