ジャンル | アニメーション / コメディ / ファミリー |
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製作国 | 日本 |
製作年 | 2001 |
公開年月日 | 2001/4/21 |
上映時間 | 89分 |
鑑賞 | NETFLIX |
「懐かしい」と涙を流していた自分が懐かしい
ネトフリで見つけて思わず「あるのかよ!」と声に出して呟いてしまった。アマプラでも、一時的に契約していたHuluでも見つからなかった。
20年近く昔に観てえらく感動したのだけ強烈に覚えていて、どうしてももう一度観たかった作品だったんだが、今あらためて鑑賞すると、それほどでもなかった。あれ?
あの頃の涙はいったい何だったんだろう。
いや、わかる。子供じゃなく、オトナたちがこぞってこの作品を「名作だ」と評価する理由も。
ずばり「20世紀博」だよね。それから「20世紀博」内に作られた昭和の街並みだよね。
いつも夕焼けの街、木造住宅、八百屋・魚屋・タバコ屋、三輪バイク、赤電話・赤ポスト、同棲、ミシン、白黒テレビ。時代のニオイ。
あの頃子供と映画を観に来た親たちの年代が、ちょうど「懐かしい」と思える時代描写。これは2001年当時のオトナなら喰らっちゃうよ。
それであの場面だ。
しんのすけが催眠状態のひろしに足のニオイをかがせて正気を取り戻させたシーン。気を失ったひろしが、夢の中で自分の半生を思い返す。
田舎の自然で遊びまわった少年時代、青春時代の初恋。それから大人になって会社勤めを始めて、結婚して、子供たちが生まれて、家族で過ごした楽しい日々が蘇る。そして「自分はなんて幸せなんだ」と涙を流しながら目を覚ます。すると、トドメに愛する息子・しんのすけが優しい声で問いかけるのだ。
「父ちゃん、オラがわかる?」
ここがとんでもない破壊力。自分と同年代か、少し上の世代なら大落涙は不可避でしょう。
ただし20年前のアラサーならば。
そうなんだよな。20年前の我々の世代は、急激に変わっていく世界に対して「アウェイ感」が付きまとっていた世代。要するに、我々の多くにとってホームはあくまで「昭和」で、21世紀という新世界にまるでしっくりきていなかった。「借りてきた猫」状態。だから、「あの頃は良かったなあ」「あの日に帰ろう」なんて言われちゃうと、ついキュンときちゃう。
それこそが、当時流行した「レトロブーム」の正体なのだ
……という一説をどこかで読んだことがある。ごめんなさい、受け売りでした。
それから20年も経てば、我々にとっても現代はすっかり「ホーム」。「懐かしい」は変わらないけれど、もはや遠い昔の実家のような感覚。基本あそこに帰ることはない、という認知は熟成され切った。
まだ実家が恋しい20年前の自分と、もう実家を地続きではない別世界と考えている現在の自分。その違いなんじゃないかと結論付けた。
多分だけど、その後に大ヒットした「ALWAYS三丁目の夕日」を今観ても、同じように「それほどでもないなあ」なんて思っちゃうんだろうなあ。
というわけで、「懐かしい」と涙を流していた自分が「懐かしい」。自分の変化について考察するのに、いい機会をくれた作品だった。
ご清聴ありがとうございました。