ジャンル | ドラマ |
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製作国 | 日本 |
製作年 | 2025 |
公開年月日 | 2025/3/20 |
上映時間 | 106分 |
鑑賞 | チネチッタ川崎 |
ラスト15分がすべて
ラストのステージシーンがよかったよね。
「20代前半の女の子二人組が主人公」ってことで、「50代オッサン」という真逆の生き物としては、ほとんど共感がないままラストまで引きずられてきたのに、このシーンだけは、何だかよくわからない涙が込み上げた。熱い。
正直ね、106分のうち90分までは退屈だった。
阪元裕吾監督作品で脚本も本人が大きく絡んでいるので、ユルい会話劇だということはもちろん想定しての鑑賞。「殺しはおろか、アクションシーンもない」という情報も獲得済み。(原作未読)
ちゃんと、「ベビわる」シリーズからアクションを抜いたような、純度の高い”阪元節”を楽しむつもりで観に行った。いち阪元ファンとして姿勢は万端。
それでもオヤジにはキツかった。
いや、セリフはいちいち笑えるし、会話の内容も主張的でハッとさせられる部分もあった(「ビデオテープの重み」とか「ダサイクル」とか)けど、堕落的な生活と若者あるあるを延々と見せられたところで、最初はクスクス笑えても20~30分も続けばさすがに飽きる。
ひたすらに「シチュエーションを変えた若者コント」と「時々熱い青春ポエム」という展開で、物語は牛歩のように動かない。
たぶんね、20代の現在進行形ヤング層なら、セリフだけでも「あるある!ウハハ!」「そうだ!」「いいこと言う!」とぶっ刺さりまくったのかもしれないけど、青春を20世紀に置いてきたオールド層としては、セリフはともかく物語がまんじりともしないのはちょっとつらかった。
やっぱり阪元監督はある程度はアクションが入っていないと、個人的(=極端にエンタメ志向)にはしんどいなと感じてしまった。おれにはちょっと文学的(?)過ぎたかな。
「個人的に」「おれには」と、主語をなるべく最小で言うように気を付けたけど、ぶっちゃけどう? 「長げえよ」「話が全然進まねえな」って、同じように感じた人は、本当は意外と多いんじゃない? いや絶対いる(断言)。
それなのに、現在上がっているいろんな人たちのレビュー、感想を見回すに、そういう指摘はほぼ見られない。多分だけど、こう思うんだよ。
多くの人が感じた(であろう)90分にわたる「長さ」「退屈さ」も、あのラスト15分の展開で、キレイさっぱり上書きされた。と。
それくらいあれは熱かった。
誤解を解いておくと、どんでん返しは一切ない。音楽を題材にした映画では特に珍しくもなんともない、よくあるクライマックスのステージシーンだ。なのに、わけもわからず泣けた。
ものすごく大袈裟にいうと、米アカデミー賞にノミネートされた、あの「名もなき者」のクライマックスシーンよりも胸に来た。思い返せばどちらも3曲だった。「ネムルバカ」は、このラスト「3曲」の使い方にまんまとやられた。(言ってる意味わかるよね、観た人)
それまでの鬱屈した「想い」とか、避けられなかった「決断」とか、それを経て辿り着いた「決意」とか、今見てきたすべてが詰まったステージだった。90分はただの長~い”フリ”だった。平祐奈の歌はずっとヘタクソだったけど、そんなのは関係ない。魂がこもってた。
ハッキリ言って、まだ阪元裕吾監督は、得意とするアクションに頼ったがいいんじゃないかと感じた。ただ、これはこれでいい! 阪元監督は、アクションや悪趣味映画でない文芸作品でも、ちゃんとポテンシャルを出せることがある程度証明された。
個人的には「ベビわる」のように「大好きな映画!」とは思わないけれど、阪元監督自身にとっては確実にメジャー監督への足掛かりになったんじゃないかな。
エンタメ阪元好きなおれは、近い将来の製作費数十億円をかけた「ベイビーわるきゅーれvsジョン・ウィック」に期待しときます。


