| ジャンル | 時代劇 / アクション |
|---|---|
| 製作国 | 日本 |
| 製作年 | 1954 |
| 公開年月日 | 1954/4/26(新4Kリマスター版 25/10/17) |
| 上映時間 | 207分 |
| 鑑賞 | TOHOシネマズららぽーと横浜 |
だからおれは”推し”を語る。
車で1時間かかる劇場で、朝9:30からの回のみ。しかも公開は今週まで。
「なかなかハードルが高いな……」と半分諦めかけていたところで、今朝は奇跡的に早起きできたので「そうか! ここか!」と叫びながら車に飛び乗った。
実は「黒澤明BOX」(東宝&大映)は10年ほど前にヤフオクで購入し(けっこうした¥)、全制覇するまでに5年くらいかかった。なかでも「用心棒」「天国と地獄」とこの「七人の侍」は(ありきたりだけど)大好きで何度も観た。何ならこの3作はBOX(化粧箱)からずっと出ている状態。
その大好きな作品のうちの一つ「七人の侍」をリマスター版、しかも劇場の大画面で観られるということで、これを逃したら罰が当たると感じていた。よかったよ、ギリギリセーフで罰が当たらなくて。早起きは三文の徳。
観たよ。小学生以来の最前列で!
せっかくだから、視界に入り切らないくらいの位置から観てやろうと思った。それほど混んでいない劇場、しかも年配が多い観客には、こんな”子供オジサン“はおれしかいなかったみたいだけど。
やっぱり凄いねえ、最新のリマスター技術は。まず白いところが白い!黒いところが黒い! 細かなノイズも全部消えている。草花や砂埃や雨や泥しぶきがちゃんと粒立って見える。菊千代(三船敏郎)の乳首は黒い。
DVDではモヤッとしていた部分が、同年代にわかりやすく説明すると、老眼鏡をかけたみたいにクッキリ見えた。キレイすぎて、なんなら途中から薄っすらカラーに見えてきたくらい。村の長老のドアップでは、深く刻まれた皺や黒ずんだ毛穴まで見えたもんな。ジジイ、こんな迫力ある顔をしてたんだ。
ただし、いくら最新のリマスター技術でも音声はリマスター不可能だったようで、セリフはだいぶ聞き取りづらかったね。そりゃそうか。DVDではいつも字幕をつけて鑑賞してたので、実は「聞き取りづらい」なんて思ったことがなかった。けっこう字幕に頼ってたんだなあ、おれ。意外な再発見。
さて、今さらこの”必修科目“である名作の感想ってのも、なんだかアレだよねえ。「スペクタクルが~」「史上最高傑作」「巨匠」「名作!傑作!」「やっぱり面白い!」なんてありきたりな言葉しか出てこないでしょう。もはや何も言ってないのと一緒。
だからおれは”推し“を語る。
どう?観た人。7人のうちで誰が好き? リーダーの勘兵衛(志村喬)? ムードメーカーの菊千代(三船)? それとも女性陣はイケメンの勝四郎(木村功)かな?
その3人はもちろん大好きだけど、断然おれは久蔵(宮口精二)だね。けっこう普通か。
見るからに温厚で人情味あふれる他の面々と比較して、一人だけ鋭い殺気を放っている。口数は少なく感情すらほとんど表に出さない。剣の道を究め、危険な役割を買って出る、まさしく侍道をいく男。
村で野武士を待ち構えるだけの日々に、「これで女がいりゃあな……」などとうそぶく仲間(菊千代)を横目に、土砂降りの雨の中で一人剣の鍛錬に励むストイックさ。「敵から種子島(鉄砲)を一丁でも奪えれば……」と仲間が呟けば、黙って単身で敵の真っ只中へ飛び込み、本当に奪ってくる”デキる男”。「あなたは素晴らしい人だ!」と称賛されても、無骨に一切誇ろうともしない。そして最期にいたっては、鉄砲で撃ち抜かれながらも、刀を投げつけ一人でも敵を道連れにしようという執念。痺れるねえ。
多少の推し贔屓はあるが、個性派揃いの七人の中で、おれには久蔵が主役にすら見える。大好きな久蔵アニキについては語ればキリがないからもうやめる。
あとは好きなシーンかな。
前半のワクワクするスカウトシーンや後半の大迫力のバトルシーンは語るべくもないから省くと、あえて選ぶなら
「この飯、おそろかには食わんぞ」
のシーンだね。
この直前までは、百姓の切実な依頼に勘兵衛は難色を示していた。「(金も名誉もなく)タダ飯を食わすだけではな……。いや、よほどの物好きでないかぎりこれは務まらぬ」。
ところが、そのやり取りを横目で見ていた人足が、黙っていられず口を挟むんである。ここが熱い。
「見ろ! この白飯はお前さんたちの食い分だ! ところがこの抜作どもは稗を食ってんだ! 自分たちは稗食って、お前さんたちには白飯を食わすんだ! 百姓にしちゃ精一杯なんだ! 何言ってやがんだ! 助けてやれ!」
それまでイヤミったらしく百姓たちをさんざんバカにするような態度を取っていた赤の他人が、そのバカにしていた百姓たちのために、帯刀した侍に向かって命を顧みず啖呵を切るの。相手が相手なら斬られたっておかしくない。その迫力に圧されるようにして、勘兵衛が意を決して発した言葉「この飯、おそろかには食わんぞ」。これがとてつもなく重い。
毎回ここでね、おれ泣いちゃう。
あとはねえ、冒頭で勘兵衛が野党から子供を救うシーンとか、五郎兵衛(稲葉義男)の「御冗談を」とか、菊千代の「こいつは……俺だ!」のシーンとか、大好きなシーンは山ほどあるけど、もう2000字超えそうなので今回はこれくらいにしておく。
前後編合わせて207分。5分のトイレ休憩あり。映画としては「長過ぎる」と言われる上映時間だが、観ている時間が胸が一杯で、終わった瞬間はなんとなく寂しさを感じてしまったな。
寝る前にDVDでもう一周いっとくか?
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