遺書(ブログ)

ミセス・ハリス、パリへ行く

更新日:

ジャンル ヒューマン / ドラマ
製作国 ハンガリー=イギリス=カナダ=フランス=アメリカ=ベルギー
製作年 2022
公開年月日 2022/11/18
上映時間 116分
鑑賞 アマゾンプライムビデオ

 

フカフカの「善人ファンタジー」

「ジョン・ウィック」4作ぶっ通し鑑賞直後で、重度の”アクションもたれ”を患っている中で「絶対に癒されたい」とセレクトした作品。

大正解!

……どころじゃない。むしろ暴力的と言っていいほどの優しさが、画面いっぱい、上映時間いっぱいに充満した、フカフカの「善人ファンタジー」だった。ふだん人が何人も死ぬ映画ばかり観ている悪趣味オヤジにとっては、逆にアナフィラキシーショックを起こすんじゃないかと心配になるほど癒された。

序盤で主人公のミセス・ハリスが「大金を掴む」というところから物語が始まるんだが、その大金が「いつ悪人に盗まれるか」とヒヤヒヤしてごめんなさい。駅でたむろしているおじさん、会計士のアンドレ、モデルのナターシャ、そしてダンディなシャサーニュ侯爵、疑ってごめんなさい。善人の顔して「どうせお前ら、お金が目的なんだろ?」と正直思ってました。おれの心が汚れすぎていました。

同じように思っちゃった人も謝ってください。

もうほんと、ミセス・ハリスが菩薩のようにいい人なんだよ。戦地で行方不明の夫を13年も待ち続け、亡くなったと知った後も、勤勉な家政婦としてひたむきに生きている。誰にでも親切に接し、鼻持ちならない雇い主でさえも誠実に向き合う。

そんな人だから、ミセス・ハリスの周囲は優しさに満ちている。ちょっと落ち込むようなことがあっても皆が心配するし、失敗しても必ず誰かが助けてくれる。

素晴らしきこの世界。
陳腐な言葉で恐縮だけど、心が洗われるようだった。

1950年代。まだオートクチュールしか扱っていなかった頃のクリスチャンディオールの描写も興味深かったね。昔はあんな風にドレスを1着1着仕立ててたんだ。

まずはファッションショーでデザインを決め、何日もかけて寸法を測り、何人もの職人が一か所一か所こだわって手直しして、ようやく一点物のドレスが仕上がる。

1着500ポンド(数百万円)かかるということも納得できたし、一介の家政婦にはとても手が届かない代物であることも理解したし、同時に「こんなドレスを手に入れたい」という夢も、すごく素敵なことだと共感できた。

だから、紆余曲折あって、ようやくドレスが完成したシーンでは泣けたなあ。ドレスを着て誇らしげに立つミセス・ハリスの嬉しそうな顔、その周りで小さく拍手する職人たちも、涙腺を激しく揺さぶった。シーンを盛り上げる音楽もいい。

ラスト近くでちょっとムカッとくる場面があるんだけど、これは「善人ファンタジー」だから、絶対に胸糞展開にはならない。親切こそ正義。善人こそヒーロー。ちゃんと観客の誰もが期待する大団円に着地する。

ストーリー的には、それこそ1950年前後の白黒映画にもありそうな「素晴らしき哉、人生!」のようなシンプルな構成なんだけど、直前に「ジョン・ウィック」シリーズで400人以上が死ぬ場面を観てきた反動か何かわからないが、異様に感動してしまった。

「心の垢が溜まってきたな」と感じたときに、心のクリーニングとしてまた観たい映画リストに登録しておこうと思う。

にほんブログ村 映画ブログへにほんブログ村 映画ブログ 映画備忘録へ 全般ランキング

-遺書(ブログ)
-

Copyright© R50(仮)-アールフィフティカッコカリ- , 2024 All Rights Reserved Powered by STINGER.