遺書(ブログ)

バトル・オブ・ザ・セクシーズ

投稿日:

 

ジャンル 社会派 / 伝記 / ドラマ
製作国 アメリカ
製作年 2017
公開年月日 2018/7/6
上映時間 122分
鑑賞 アマゾンプライムビデオ

「頑張れ女性」映画であり「頑張れジジイ」映画

予告編のド頭
「いいことを思いついた! “男性至上主義の豚 vs. モジャ脚のフェミニスト”の対決をやらないか?」
のセリフで絶対に観たいと思った。

「いいことを思いついた」”豚”は、テニス史上初の年間グランドスラムを達成した伝説の男子選手、ボビー・リッグス本人。それを持ち掛けられた”モジャ脚”は、当時の世界トップ女子選手ビリー・ジーン・キング(通称キング夫人)。

要するに、当時誰もが知る男女テニスプレーヤー同士の「性別間の戦い(Battle of the Sexes)」。これが1973年に本当に起きた「実話」なんだとか。生まれてはいたけど知らなかった。

一見ムチャクチャな対決に思えるけど、伝説の男子選手リッグスは当時御年55歳。「男vs.女」というよりは「ジジイvs.現役バリバリ女子」というところがキモ。

今でいえばピート・サンプラス(53)vs.大坂なおみ(27)ってところかな。ほら、めちゃくちゃ面白そう。

今では考えられないほどに男女格差が激しい1970年代初頭のアメリカで、女子トッププレーヤーのキング夫人(エマ・ストーン)は男女の賞金格差に苦言を呈して、当時のトップ選手を連れてテニス協会から脱退。社会に大きな波紋を起こした。

この騒動に目を付けたのが、現役を退いて抜け殻のように生きていたリッグス(スティーブ・カレル)。世間から「生意気な女」として叩かれているキングと戦うことで、大きな注目を浴びられると目論んだ――という筋書き。

キング夫人とリッグスという2つの視点で描かれていくんだが、「ウーマンリブ」を体現するようなキング夫人の”キラキラ感”と、人生も峠を越して何をやっても満たされないリッグスの”どんより感”の対比が刺さった。ジジイだから当然リッグス目線だ。

苦境に陥っても、むしろそれを栄養にするかのようにバイタリティ溢れるキング夫人たちが、さぞかし眩しかったんだろう。羨ましかったんだろうな。

そして「いいことを思いついた」後のワクワクしていく展開。薄暗かった世界がパッと明るくなる。徐々に生気が戻っていくリッグスの表情に、泣くところでもないのにジーンときてしまった。

覚醒したリッグスは、一度断られたくらいでは折れない。あらゆる手段を講じて受けざるを得ない状況を作っていく。別の女子選手を騙して戦って勝つ。スポンサーを集める。派手な記者会見を開く。そして当日は数万人規模の会場にド派手な演出。

試合の主役は、紛れもなく「ウーマンリブ」の旗手・キング夫人の方だが、宿敵の”豚”・リッグスも見事に世界の注目を浴びている。よくやったよリッグス。拍手を送りたくなった。

試合の行方は史実でネタバレしているが、ここには書かない。ただ最終的に、茶番のようなこの試合が、その後の女子プロアスリートの歴史を変えるほどの価値を持ったという。自称「男性至上主義の豚」が新たな時代を築いた。そう考えると胸が熱くなる。

この作品は、旧態依然とした女性格差の時代を描いた「頑張れ女性」映画であると同時に、間違いなく「頑張れジジイ」映画であり、総じて「苦境に負けるな人類」映画だった。

「おれもまだまだ頑張れる」と刺激を受けた。観てよかった。

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