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【備忘観戦録18~対マリーンズ~〇】佐々木には負けたが試合に勝った

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勝利投手 日本ハム 北山 (3勝0敗1S)
敗戦投手 ロッテ 西野 (1勝2敗0S)
セーブ 日本ハム 宮西 (0勝1敗1S)

肉を切らせて骨を断った

佐々木朗希には本当に手も足も出なかった。でも勝った。

先発の佐々木には8回パーフェクトを食らった試合で、たった1本のヒット(ホームラン)で勝った。この字面が気持ちいい。

柔よく剛を制す。肉を切らせて骨を断つ。勝てば官軍。もはや佐々木に8回を完全投球されたことさえも最高の冠となる「伝説の試合」になった。

佐々木は本当に凄かった。常時160kmを超える剛速球の凄まじさは言うまでもなく、制球も良く3ボールにすらならない。「必ずストライクゾーンに入ってくる直球」とわかっていてもボールにも当たらない。偶然当たったとしても、ファールか、力ない振り遅れでゴロか小飛球となる。ファイターズファンとしてここまで言うのは悔しいが、プロ野球選手としての次元の違いを見せつけられた。ベタな例えで言えば「高校野球に一人だけプロの選手がいる感じ」。同じグラウンドに立ってはいけないとすら思えたほどだ。

テレビを見ていた多くのプロ野球ファンは、大谷翔平以来のニューヒーロー誕生に沸き立っていたようだが、ファイターズファンのおれからすれば、冷血非道で無慈悲な魔王だった。

ただ、8回まで絶望の中にいたからといって、決して「つまらなかった」というわけではなかった。その最大の要因こそがファイターズ先発上沢直之の粘投である。佐々木が一切の隙もなく三者凡退を積み重ねていく向こうで、上沢もマリーンズ打線を「技」で無失点に封じ続けていた。

上沢、踏ん張ってくれ

何度も言っている通り、マリーンズ先発の佐々木には手も足も出なかった。一方で、まるで崩れる兆しのない佐々木に対して、上沢は毎回のようにランナーを出しながらもギリギリのところで踏みとどまっている。

「おーい打線! 早く上沢を援護してやってくれよ!」

……と、いつもならば打線に苦言を呈したくなるところだが、この試合に限っては不思議とそういうマインドにはならなかった。

素人でもわかる。名だたるプロ野球選手がボールに当てるのに精いっぱいだ。偶然バットに当たった球が偶然野手のいないコースに飛ばなければヒットにはならない。ヒットを打つのが偶然なら、偶然を積み重ねないとできない得点は「奇跡」である。多くのファイターズファンが、打てない打線をなじるではなく、こんな風に祈っていたはずだ。

「上沢、打線が奇跡を起こしてくれるまで、何とか踏ん張ってくれ」

結局、打線は佐々木を攻略することなく文字通り完璧に封じ込められたが、上沢も7回を見事無失点で投げ切った。

8回終了時点でスコアは0-0。パーフェクトだろうが4被安打2四死球だろうが、試合としての価値は変わらない。この上沢の粘投が、8回終了時、パーフェクト継続中の佐々木朗希降板へと直結した。

恐らく1点でも取られていれば、佐々木は「2試合連続完全試合」という大偉業に向かって9回のマウンドにも立っていたことだろう。そして(言いたくないが)偉業は達成されていたと思う。

「佐々木投手の完全試合を阻止したのは日本ハム打線ではなく上沢投手だった」

と解説者がポツリとつぶやいた言葉にジーンときた。上沢にはこの試合で勝ち星はつかないが、まぎれもなくこの”伝説の試合”の主役の一人だった。記録には残らなくても、観ていたファンは全員知っている。

北山が覚醒した瞬間

幕切れは劇的だった。

スコアレスドローの9回裏。マウンドに立ったのはルーキークローザー北山亘基。

先頭のレアードにいきなり死球を当てると、代走の和田康士朗に二盗を決められ、打席のマーティンを敬遠。続く佐藤都志也には簡単に送りバントを決められ、1アウト2塁3塁というサヨナラの大ピンチ。自信なさげにマウンドで汗をぬぐう北山。

北山のメンタルも相当なものだけど、さすがにこの場面は荷が重すぎたか……と、覚悟を決めたこの場面からの北山の気迫が凄かった。

特にエチェバリアの打席は熱くなった。

初球カーブで空振りを取ると、ここからはふっ切れたように最速155kmのストレートを5連投。エチェバリアも必死で食らいつくが、鬼の形相で投げる北山の伸びやかなストレートは当てても前に飛ばない。最後はゾーンからキレよく落ちるフォークで空振り三振に仕留めた。ツーアウト。

次の福田光輝には四球を選ばれてしまうが、全球うなるようなストレートで攻めの投球だった。表情を見ればわかる。もはや5分前の危ういルーキー北山じゃない。防御率0.00の鉄壁クローザー北山だ。満塁にされてしまったが、妙な安心感があった。現実に代打安田尚憲を見事に三振に斬って取った。

「劇的」といえば、この直後10回表の万波中正のホームランを最初に思い浮かべると思うが、個人的には9回裏の北山亘基の”激投”(エチェバリア以降)が終盤で最も興奮したシーンだった。

万波のホームランで貴重な1点を勝ち越したその裏(10回裏)は、レジェンド宮西尚生がランナーを2人出しながら”料理”。「点をやらなきゃいいんだろ」という”らしい”投球で締めくくった。

文字量もずいぶん増えてしまったが、それくらい興奮した試合だった。上沢、北山、万波以外も、8回裏を3人で抑えた堀瑞輝、投手陣をリードし続けてきた女房役の宇佐見真吾、もちろんまるで打てなかった打撃陣も、あのバケモノに必死に立ち向かった勇者だった。

今回は佐々木を攻略できなかったが、ファイターズ打線は佐々木の実戦投球を102球きっちり見せてもらった(しかも試合には負けずに)。

しっかり準備して、次回はファイターズ打線が佐々木を打ち込むところが見たい。

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