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悪魔のいけにえ(1974)

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ジャンル ホラー / バイオレンス / スリラー
製作国 アメリカ
製作年 1974
公開年月日 1975/2/1
上映時間 84分
鑑賞 YouTube(松竹シネマPLUSシアター)

これ、アートです。

何度か観た「悪魔のいけにえ」が23日までYouTubeで無料公開ということで、”音だけ鑑賞”のつもりで横で流して仕事していたら、気が付くと食い入るように画面を観ていた。

もうね、ビジュアルが良すぎるんだよ。横目でちらちら見ているうちに視界も脳も奪われちゃう。

テキサスのザラついた空気、果てしなく続く道路にボロいバン、5人の男女、古びたガソリンスタンド、牧歌的な田舎風景にポツンと一軒家、乾いた風に乗って聴こえてくる自家発電機の回転音。いい。好き。

あいつらさえいなければ、ここに住んでみたい。

言わずと知れた低予算ホラーだけど、画角、撮り方、つなぎ方にとことんこだわっているので、低予算感がまったく気にならない。この点が、のちに制作されて並び称されるようになる「ハロウィン」「ゾンビ」「はらわた」なんかとは個人的には「格が違う」と思っている。

特にあのシーンがお気に入り。最初の犠牲者が撲殺されるシーン。謎の家に入り込んでしまい捜索しているうちに、唐突にレザーフェイスが目の前に現れて大ハンマー一発。急に引きの画角になって、男はターンしながら仰向けに倒れて体をガクガクっと震わせながら絶命する。

血なんて出ない。そのかわりドキュメンタリータッチの冷たい映像で、まるで本物の殺人現場を目撃してしまったかのようにリアル。この後も、2人目の犠牲者があのお馴染みの肉吊るし爪(?)に吊るされた場面も、直接的な場面があったわけじゃないのに、「ソウ」シリーズばりのゴア描写のように感じた。つい「うわっ」って口に出しちゃう。あのぶっとい鍵爪が背中に刺さった場面が確かに見えた。

そして伝説のラスト。「朝日に照らされるレザーフェイスダンス」だ。

襲われた恐怖と「逃げ切った!」の安堵と、レザーフェイスの怒り、悲しみ。それらが複合した美しさがオレンジ色の太陽に照らされて、チェーンソーの空しい回転音とともにエンドロールの闇へ消えていく――。ハッキリ言う。

これ、アートです。

本当はバリバリの恐怖映画を作りたかったんだけど、なるべくコストのかからない撮り方を追求していったら、芸術作品になっちゃいました……って感じかな?
(知らないけど詳しい人教えて)

マイフェイバリットな邦画「笑の大学」(三谷幸喜作)のように、制約にがんじがらめにされたクリエイターが、それを不屈の精神で乗り越えて、当初想像したものよりも何倍も凄いものを作り出してしまった、というフーパー監督のメタストーリーも透けて見えて、ちょっと目頭が熱くなった。

ストーリー自体は面白くない。
でも、これはMoMAにも所蔵されているという「芸術品」だから、そんなのどうでもいいよね。

またしばらくしたら、この芸術品を鑑賞する。

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