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侍タイムスリッパー

投稿日:

ジャンル コメディ / ファンタジー / ドラマ
製作国 日本
製作年 2023
公開年月日 2024/8/17
上映時間 131分
鑑賞 チネチッタ川崎

製作者たちの熱意込みで感動

観てきた。話題の「侍タイムスリッパー」。

とてつもない評判と「カメ止めの再来か?」という呼び声の高さから「すげえな、どんだけトンがった作品なんだろう」と構えながら鑑賞したが、作りは「ごく普通」だった。

「カメ止め」のようなアッと驚くアイディアも大胆な大仕掛けもない。どんでん返しも特にない。もともと予算をかけた大作ではないので、当然派手な映像も音響もない。ごく普通。普通に、そのまんま「侍が現代にタイムスリップしてくる話」だった。

「ごく普通」なのに最高に面白かった。
これが本当にスゴイことだと思う。大袈裟に言って快挙。

タイムスリップを題材に使っているのでタイムパラドックス展開になるかと思えば、ほとんどそこは生かさない。タイムスリップはあくまで主人公・高坂新左衛門(山口馬木也)のキャラ付けの一部に過ぎなくて、劇中の大半は京都の撮影所とその界隈の人々のド直球な人情物語。

これ、誰がここまでヒットすると思う?

この企画書を持ってこられても、大手・中堅の映画会社では大きな予算は出せないでしょう。インディーズになるのも無理はないよね。

しかし結果は誰もが知る通り。上映1館から始まった「侍タイ」は拡大上映を重ねて大ヒットを記録した。これはもう、イチかバチかの宣伝戦略と、それを裏切らなかったクリエイターの実力としか言いようがない。前者も後者も安田淳一監督だということも含めてスゴイ。

作品は、時代劇への深い愛情が込められた内容。幕末から現代にタイムスリップした侍・高坂新左衛門が初めてテレビで時代劇を観て感動する場面を発端として、「時代劇」というコンテンツの普遍的なエンタメ性をひたすら説くものだった。劇中の作り手たちの熱気と切実な想いがビシビシ伝わってきて泣けた。こういうクリエイターの熱い物語はホント弱いんだよ。

「時代劇など老人しか観ない」という時代になってずいぶん経つ。それなのに、おれのようなジジイ世代ならともかく、時代劇を観ない(何なら知らない)若い世代にもこれが響いたんだよなあ。すごいなあ。

劇場で爆笑したり泣いている人なんかを横目で見ながらそんなことを思うと、安田監督をはじめとする制作陣の気持ちになって、メタでも泣けた。

個人的には、作品単体で見れば評論家やレビュアーたちが”右向け右”で大絶賛するほどではないと思う。もちろんいい作品だけど、邦画にはこれまでにも、これくらい熱い作品や泣ける作品はいくらでもあった。

ただね、本作に限っては、「絶対にいい作品にしてやる」「いい作品だから絶対観てくれ」という製作者たちの熱意がダダ漏れてきて、それ込みで異様に食らってしまった。

想定以上のヒットで慌てて作ったと言われる手作り感満載のパンフを読みながら、今もちょっと涙ぐんでる。安田監督、貫き通したなあ。

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