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【備忘観戦録2021完結編】〇栗山監督の幸せな引き際(10・30 ZOZOマリンスタジアム)

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勝利投手 日本ハム 伊藤 (10勝9敗0S)
敗戦投手 ロッテ 小野 (0勝3敗0S)
セーブ 日本ハム 杉浦 (3勝3敗28S)

ついに最終戦。今シーズン144話目(雨天ノーゲーム含む)を迎えた。「備忘観戦録」もひとまず最終回。読者は決して多くはなかったが、それで構わない。自分にとってはひとつのチャレンジだった。1シーズン完走できた自分を褒めてやりたい。頑張ったな、おれ。

さて、栗山監督最後の試合は、今シーズン屈指の好ゲームだった。中盤に両軍とも1点ずつ取り合い、同点のまま迎えた終盤にファイターズが突き放し、勝利を手中に収めた。8回と9回に反撃を受けハラハラさせてくれたのも、勝った後に振り返ればいいスパイスだった。昨日のような一方的な展開よりも、多少のストレスがあった方がドラマチックで心に残る。栗山監督の想い出にも、きっといい形で残ってくれたに違いない。

今日はZOZOマリンスタジアム現地だった。今月は珍しく仕事が詰まっていたが、栗山監督のラストを見届けたくて、少し無理してチケットを取った。だから試合展開がどうというよりも現地観戦録中心になる。

撮影:マッキーホンダ

内野席Sの14列目となかなか見やすい席だった。マリンスタジアムでは毎度のことだが、3塁側と言っても周囲はマリーンズユニホームだらけ。特にチケット販売当時は胴上げの可能性があったので、マリーンズファン率はことさら高かったと思う。左右隣りはもちろん、前列・後列ともに全員マリーンズファンだった。その真ん中に「KIYOMIYA 21」と書かれたファイターズのビジターユニホームを着たおれがいるという構図。

序盤はマリーンズ先発の本前郁也に手も足も出ないといったファイターズ打線だったが、4回表に近藤健介がやってくれた。本前の外角ストレートを近藤らしい流し打ちで”一発攻略”。小さなビジター外野席のファイターズファンのど真ん中に、見事な先制ホームランを突き刺した。

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まわりのマリーンズファンのため息を横目に両腕を突き上げて喜ぶおれ。どこからか聞こえてきた「なんだよ近藤、大目に見ろよ」のクレームが心地よい。君らにはわからないだろうが、今日のファイターズには大目に見られない理由がある。

しかしその優越感も5回裏までだった。ここまでスイスイと無失点で切り抜けてきた先発の伊藤大海が、先頭の荻野貴司に先頭フォアボールを出した。盗塁と内野ゴロの間にランナー(この時ランナーは小川龍成)は三塁まで進み2アウト3塁。ここでレアードにレフト前へはじき返され、同点に追いつかれた。

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一気に沸くマリーンズファンの真ん中で全身で悔しがるおれ。「(岡大海といい)なんで元ハム戦士はいいところで打ちやがる!」と心の中で叫んだ。もしかしたら口に出ていたかもしれない。自意識過剰だと思うが、周囲の冷ややかな視線を感じた。

その後は伊藤も踏ん張り、マリーンズにも5回まで投げた本前と6回に登板した岩下大輝によって危なげなく無得点に抑え込まれた。

そして1-1の同点で迎えた7回表。周囲のマリーンズファンがザワザワしだす。投手交代。マリーンズのマウンドに上がったのは、今シーズンで引退する南昌輝だった。大卒2年目の2012年(奇しくも栗山監督の就任年)からブルペンの柱として働き、2016年には57試合も登板した名リリーバーである。あの頃いい場面で登板して、まんまとピシャリとやられた記憶が甦る。ここ数年は難病に悩まされ、再起をはかっていたと聞いていた。

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満場の拍手で迎えられる南。おれも(この時は)つられて拍手した。しかし1球目のストレートを見て驚いた。掲示板に表示された球速は「145㎞」。判定は「ストライク」。場内には改めて大きな拍手が巻き起こる。今度はおれも心から拍手した。闘病のブランクを越えて、今日のために調整してここまで生きた球を投げていることに、プロ野球ファンとして素直に感動した。すごいぞ南。

これは(失礼ながら)斎藤佑樹や松坂大輔の登板とは様子が違う。打席の髙濱祐仁もそれを感じ取ったのか、真剣勝負の構えでこれに対峙する。3球目「146km」、4球目「147km」と球速はどんどん上がる。高濱も必死でこれをカットして逃げる。1球ごとに拍手が鳴りやまない。隣の藤原のキーホルダーをつけていた女性なんかは鼻をすすっていた。そして7球目ストレートを髙濱は豪快に空振り。三振。

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ファイターズファンとしては正直悔しかったが、感動が勝った。気づくと手が痛くなるほど拍手していた。4列ほど前の西川ユニホームをペアで着た母娘も、二人して夢中で拍手していた。テレビでは観られない、とてもいいシーンに出会えた。スタンドに手を挙げながらマウンドを下りる南の姿に、少し目頭が熱くなった。

さて試合に戻る。南がマウンドを下りた後、まだ感動の渦が引ききらないうちに、ショートの名手エチェバリアにエラーが出た。すかさず代打王柏融のタイムリーツーベースでついにファイターズが勝ち越した。

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「よっしゃあ!」と思わず声が出るおれと、「あぁ……」とガックリ腰が砕ける周囲のマリーンズファン。狭い範囲で繰り広げられるファン同士のマウントの取り合い(笑)の再開である。マリーンズもいい流れに乗ってCSに臨みたいんだろうが、こちらも伊藤の10勝と栗山監督の花道がかかっている。ファン同士とはいえ、「勝利への執念」という気持ちで負けるわけにはいかない。

その想いが通じて、土壇場8回に高濱のタイムリーで2点差に突き放しファイターズが優位に立つ。

その裏に1点を返されるが、9回には代打大田泰示の2点タイムリーツーベースで試合を決めた。

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3点リードに護られて9回のマウンドに上がったのは、今年1年間守護神として27セーブをあげてくれた杉浦稔大。ハッキリ言ってマリーンズには弱い(防御率8.38)。

マリーンズファンにもそういう印象があるようで、先頭の佐藤都志也にソロホームランを放り込まれたとき、後ろのファンが「よーし、杉浦ならいけるぞ」などとおれに聞えよがしに呟いていた(自意識過剰)。それを聞いておれも「杉浦絶対大丈夫。おまえは無敵だ無敵だ無敵だ」と念仏のように唱えて対抗した。

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結果は誰もが知る通り。おれの念仏が勝った。杉浦はホームランを打たれた後、2つの内野ゴロと、最後はエチェバリアを空振り三振に斬って取りゲームセット。

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これで実に「7度目の正直」となった伊藤大海のルーキー10勝目が確定。上では書かなかったが、西川遥輝の盗塁王(4人同時受賞)も確定。

それより何より、栗山監督の最後の試合を花道で飾れたのが嬉しい。

栗山監督の”同期”近藤の先制ホームラン、栗山監督が台湾のファンに頭を下げて連れてきた王柏融の勝ち越しタイムリー、栗山監督がその素質に惚れ込んで巨人の二軍から一流打者へ大成させた大田泰示のダメ押し。

栗山監督にただならぬ恩義のある選手によって飾られた花道。10年間、きっと辛いことの方が多かっただろうが、それを上書きしてくれるほどの幸せな勝ち方だった。

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ゲームセットとともに、グラウンドとベンチから選手・コーチ・スタッフそして栗山監督が集まり、レフトスタンドへ最後の挨拶へ向かう。「これが最後か」。そう思うと涙が出そうになった。帽子を取って手を振る栗山監督に、マリンスタジアム全体が惜しみない拍手を贈っていた。

周囲を見渡せば、隣りも前も後ろも全員拍手していた。藤原のキーホルダーをつけていた女性も、「杉浦ならいけるぞ」と言っていた意地悪なマリーンズファンも、安田ユニも朗希ユニもみんな、両手を上げながら拍手していた。嬉しかった。

そのシーンに揺さぶられて、恥ずかしながらついに涙がこぼれてしまった。

栗山監督の10年間を締めくくる試合。退任セレモニーは先週札幌ドームで済ませたが、それに匹敵するほどの温かい引き際になったと思う。

栗山監督にとって、この10年が「幸せだった」と振り返られる期間になるといい。心からそう願う。

↓ゲームセットから栗山監督がグラウンドを去るまでのおれの目線。

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