遺書(ブログ)

サウナという異常空間について。

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おれはサウナが好きなんだが、スーパー銭湯などに友人と一緒に行くと、よく「サウナの何がいいの?」と聞かれる。説明できなくはないが、そんな質問をする”常人”に、あの異常空間の魅力を語るには膨大な言葉を要する。

面倒なときは、ひとこと「危険だから行くな」とアドバイスするようにしている。

あの中には魑魅魍魎が蠢いている。キミのような真人間は近づかないほうがいい。

見てみろ。あのサウナ室の扉を。
ここからでも、あの扉の向こうからモヤモヤと妖気のようなものを感じないか?

あの恐ろしげなあの扉をくぐり、灼熱の中、むせるような湯気の奥を進んでいけば、ひな壇に並んで息を潜める幾多の妖怪たちが見えてくる。

まず正面に見えてきたのが、サウナ室内で最も存在感を主張している「鬼達磨」だ。
ひな壇の上に座るではなく胡座をかき、赤鬼のような形相でキツく目を閉じ、ジッと灼熱をその身に受け止め耐えている。
禿げ上がった頭頂から滝のような汗を流しながらも、まさしく達磨のように微動だにしないのが特徴。その険しい表情とは裏腹に、この灼熱世界を心から愛している。
生息時間は約12~15分。

そして、その隣で座禅を組んでいるのが「修行僧」である。
絶えず「ハァハァ」と辛そうに、声とも吐息ともつかない噪音を発し続けている。時折「うぅぅぅ……」と身の毛のよだつようなうめき声で、来る者を恐怖に陥れる。
基本的に彼らは「耐える」ことそれ自体を目的とし、”苦行こそ喜び”という矛盾した生態を持つ。そのため、生息時間は10分以内とやや短めだ。

ちなみに、彼ら「修行僧」のなかには、まれにタオルで頭全体を覆うタイプの「スケキヨ」も存在する。
仮面(タオル)の中から聞こえてくるうめき声は特に不気味だ。こちらからはその表情は見えないが、向こうからは見えている。あまりジロジロ見てはいけない。

ここで、耳を澄ましてみてほしい。
どこからか、ひそひそ話が聞こえてこないだろうか。
それが、常に2体以上で行動する「ペチャ雄とクチャ郎」の声である。
彼らは同時に現れ、ひとしきり愚痴や噂話(や猥談)などを念仏のごとくボソボソつぶやき合い、話題に一段落着くと、同時にゆらりと消えていく。
静寂のあの空間に彼らが出現すると、気にせずとも、ついついその話題に引き込まれてしまう。毒にも薬にもならない話ばかりなので、黙って聞いているとイライラする事が多いが、生息時間は6~8分と短いので少しの辛抱だ。乗り越えろ。

彼らが出ていくと、再び静寂が訪れる。しばらくすると、やがて彼らがいるうちは気づかなかった不快な音が聞こえてくる。

クチュクチュ・・・
クチュクチュ・・・

おれが最も忌み嫌う「クチュラー」の所作が発する音である。

サウナではすべての人間(や生き物)が、全身を大量の汗でぐっしょり濡らしている。
通常はそのままダラダラ流しっぱなしにするかハンドタオルで拭うのだが、「クチャラー」は、目的がなんなのかは不明だが、その汗を絶えず手で全身に塗りたくっているのだ。

クチュクチュ・・・
クチュクチュ・・・

その音を聞いているだけでも鳥肌が立つ。

ときに、塗りたくったその汗がしぶきとなってこちらに降りかかる時がある。その時の不快感ときたら、表現する言葉が見つからない。思い出すだけで身の毛がよだつ。
生息時間は12分以上と長い。遭遇したら、なるべく距離を置くことをおすすめする。

そして最後に紹介したいのが「覗き魔」だ。
彼らは決して存在を主張しようとせず、目立つところには座らない。サウナ室の隅、ストーブの陰、柱の向こう、赤達磨や修行僧の背後……どこにでもいて、彼らの生態を覗き見している。

何をするでもない。それを見て、ただニタニタしている。
この異常空間内のヒエラルキーでいえば、もっとも底辺の存在。

おれである。

サウナという異常空間には、おれも含め無数の魑魅魍魎が蠢いている。キミのような真人間は近づかないほうがいい。もう一度言う。

「危険だから行くな」

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