遺書(ブログ)

油そば

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今日も暇だったので、ウォーキングついでに近所の油そば屋に寄った。

油そば(あぶらそば)とはスープのないラーメンの一種である。どんぶりの底に入ったごま油や、しょうゆベースのタレに、ラー油、酢などの調味料を好みでかけ、麺に絡めて食べる。「汁なしラーメン」ともいわれる。(Wikipediaより転載

ウォーキングしても油そば食ったら意味なくないのか?

意味はある。
おれはジョギング(ウォーキングを含む)と、ダイエットは断じて違うという考えを持っているが、それはまた別の話。

昔、江戸川橋の会社に出入りしていた頃、その近くに油そばの有名店があり、油そばを初めて食べた当時は「こんな旨いものがこの世にあるのか」と感動したほどだった。
あの頃は駆け出しで、仕事はとにかくキツく、精神的にも肉体的にも追いつめられていた頃だった。
仕事が一段落するたびに食べた”ご褒美”油そばは、本当に旨かった。

最近、近所でウォーキングを始めてから、このあたりに油そば屋があることは認識しており、ここでいつか食ってやろうと目論んではいた。

実はこの店、SEKAI NO OWARIのメンバーがよく訪れている店として有名らしく、ファンの巡礼地としても知られている。いつもドラゲナイな行列ができていると聞いていたので、心の何処かで敬遠していた。

今日通りかかったときは、15時台という時間帯のせいか、珍しく列ができていなかった。これはチャンスか。

店を覗く。
すると、7~8人しか座れない小さなカウンター席に、「座れ」とばかりに1席だけ空いていた。

そうか。今こそその時か。
神様、そうなんだな。

実は医者から「なるべく油ものは控えてください」と釘を差されており(それもまた別の話)、数ヶ月ラーメン断ちをしていた。
しかし今日は神様が「食っていい」と囁いている。

・・・入店した。

まずは食券を購入する。
昔よく油そばを食べていた店では「生玉子」と「ネギごま」が定番だったが、この店には「ネギごま」トッピングはないようなので、「生玉子」のみトッピング。
そして、油そばは「普通盛り」では物足りないことを思い出したので、「大盛り(1.5玉)」をセレクト。昔はW盛りだったが、もう若くない。これくらいでいいだろう。

空いているカウンター席につき、食券を店員に手渡す。
目の前の調味料を見ると、通常よりも数サイズも大きい酢差しとラー油差しがその存在を主張している。
懐かしい。あの店と同じだ。

昔の記憶をたどりながら目を細めているうちに、油そばが届く。
思い出してきたぞ。油そばはそのまま食べてはいけない。
カウンターにも説明書きがあるように、酢とラー油をたっぷりかけ、そしてグッチャグチャにかき回すのだ。決して味ムラが出ないように、混ぜて混ぜて混ぜ尽くす……!

どんぶりの底から麺を持ち上げるように、無心でかき回す。
無心でかき回しているうちに、なぜか目頭に熱いものを感じていた。

覚えているぞ。
箸を通して右腕に伝わってくる、ずっしりとした麺の重み。
かき混ぜるごとに聞こえてくる、クチャクチャ、クチャクチャ、という音。
どんぶりから漂ってくる、酢とニンニクの混じったような香り。

そして、あの頃の思いも。

あの頃のおれは、クライアントや上司、師匠のどんな理不尽にも、「修行中だから」の一言だけを糧に、歯を食いしばって泥の中を這いつくばっていた(※イメージです)。
誰にも褒められず、誰にも讃えられず、ただひたすら出口の見えないトンネルの中で、前と思われる方向を進んでいた(※イメージです)。

そんな地獄の中でも、何かを成し遂げた時に食べる油そばは、文字通り自分が自分に贈る“ご褒美”だった。
あの頃、あの店に行くときは、必ず何かしらの「よくやった、おれ」を引き連れていた。
よく頑張ったな、30歳のおれ。
長きに渡って閉ざされていた扉が、たまたま寄った油そばで開かれた。

記憶で忘れても心で覚えていた

この瞬間、もはやおれは2018年のおれではなく、2000年頃の若きおれに戻っていた。

食べたら泣いてしまうかもしれない。
こぼれそうになる涙をこらえながら、よくかき回した油そばを慎重に口に運ぶ。しかし次の瞬間である。

・・・マズッ!

戸惑うおれ。かつて、「世界で一番ウマい」と思っていた油そばが、今は、マズい
こんなにしょっぱかったか?
こんなに油っこかったっけ。
無理だ全部食えない。

親愛なる油そばよ。
一瞬だけでもあの頃のおれに戻してくれてありがとう。
いいや、君が悪いんじゃない。おれが変わってしまったんだ。
愛してた。でもさよなら。


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